成長
早朝、宿屋の食堂で、俺は一人、朝食を食べる。
しばらくすると、エレズを除いた、三人が、食堂へとやって来る。
料理を注文し、
「あの……。ジャショウさん一人、馬小屋に寝かせて、申し訳ありませんでした。色んな意味で、ジャショウさんが、一番、疲れていた筈なのに……」
アデナ達は、申し訳なさそうに、頭を下げる。
俺は、カラカラと笑い、
「そんな事を、気にする必要は無いよ。君達は、長い旅をする事に成るだろうから、教えてあげるけど……。馬小屋も、匂いさえ、気にしなければ、結構、寝心地が良いんだよ♪そんな事より、早く、朝食を済ませた方が良い。妖魔の蔓延る森の中で、野宿するのは危険だからな。ここから先は、村々を、経由して、少し、大回りに成るが、安全に、旅をしなくてはならないからね。今日中に、次の村、ロゴーに、進まなくては」
「そうだったな……。エレズの奴は、何も、考えちゃいねえ……。まだ、寝ていやがるよ。昨日みたいに、連戦して、だらだら進んでいては、どっかで、潰れてしまうぞ」
ほう……。
ベルトラムも、しっかり、考える様に成ったな。
だが、それは、少々、悲観しすぎだ。
俺は、優しく笑い、
「まあ、エレズは、取り敢えず置いといて……。三人とも、気が付いているかい?たった一日で、かなり成長した事に」
「俺達が、成長している……?」
ベルトラム達は、驚き、首を傾げる。
俺は、再び笑い、
「ベルトラムは、最初こそ、エレズと同等の強さだったが。支援魔法に頼るエレズと、同等以上の戦いが、出来る様に成っている」
「あっ!た、確かに!」
「ヤファは、エレズの、無茶な要求で、乱戦中の、敵味方の中で、的確に、魔法を、敵だけに当てている。その上、詠唱時間が、最初と比べて、半分以下に成っているんだよ?」
「そう言えば……。私、頭の中で、詠唱するだけで、魔法が使える様に成ってる……!」
「そうだね……。その事は、アデナにだって言える事だよ?戦いの度に、エレズに、全ての支援魔法を、要求されているけど、今と成っては、全ての呪文を、エレズにかけるのに、一分もかかっていない!自分で気づいているか分からないけど、君は、二つ以上の魔法を、同時に発動させている!それって、凄い事なんだよ」
「あっ……!そう言えば、私……。エレズが、癇癪起こすのが、鬱陶しくて、何とか、魔法を、早くかけようと、二つ以上の呪文を、同時に発動させていました!」
「あははは!勇者様も、役に立っていると言う事か!兎に角、三人は、よく頑張っているし、成長しているよ♪後は、仲間同士、意思疎通を、大切にする事だ。最初は、互いに、声掛けをして、上手く立ち回る。慣れて来たら、目配せだけで、戦闘が出来れば、もっと、戦いやすくなる筈さ。もう一押しで、敵を倒せると思って、支援が欲しいと思った時とか。攻撃呪文を撃つのに、斜線から逸れて欲しいと思ったりね。一人で、戦っている訳じゃ無いんだ。互いに助け合って、パーティーと言うのは、成立するんだよ」
三人は、俺の言葉を聞き、目を輝かせながら、強く頷く。
まだまだ、成長する余地は、多くある。
俺の役目では無いのだが……。
まあ、この子達の成長を、見守る事としようか……。




