親愛なる追跡者
何とか、部屋が取れたと報告したんだが……。
俺が、馬小屋で寝ると言ったら、ベルトラム達が、烈火の如く怒り、宥めるのに、苦労した……。
今日は兎に角、色々とあったから、ベルトラム達は、ベッドでゆっくり休み、明日からの旅に、備えてくれと説得したのだ。
そして、夜の九時……。
俺は、満月の光を避け、親愛なる追跡者を、待つ事とする。
九時丁度か……。
この律義さ、組織の者であるな。
俺は、月光の下に歩み、茂みに向かって、手招きをする。
手練れが三人か……。
顔は隠しているが、俺と目を合わせ、静かに頷く。
「ハラ婆さんとは、仲直り出来ましたか?」
一瞬、追跡者達は、目を見開く、
「国の護衛の方でしょう?いくら勇者達とて、十三歳の、少年少女……。魔物が出る、この長旅を、子供達だけで、やらせるとは、思えませんから……。王都に到着する前に、死なれてしまえば、他国との外交カードを、一枚失う事に成ります。手数は、多いほど良い」
男達は、目を細める。
リーダー格の男が、ついに、口を開く。
「成程な……。ハラ様が、お怒りに成られた訳だ。あの勇者達は、未熟過ぎる……。それに対して、君は……!影を自称する、我等の追跡に気づき。あの荷物を持っても、汗一つ垂らさず、ゴブリン達を翻弄させ、勇者達を、鍛えていた。ハラ様の結界で、守られているとは言え、ニッサ村は、最前線に在る村だ。君のような人材を、手放したくないと言う事か」
「はあ?俺は、ただの、器用貧乏な人間ですよ。戦えるのは、ニッサ村に、流れ着くまで、一人で、旅をしていましたから。最低限、身を守る術は、持っていると、自負しております」
「そうか……」
影達が、ゆっくりと、闇に溶け込んでゆく……。
「君が、勇者であれば、心強かったのだがな……」
既に消えたか……。
中々の、手練れの様だ。
俺は、馬小屋に戻り、毛布にくるまる。
これなら、多少、無茶をしても、大丈夫だろう。
さてと……。
俺も、寝るとしようか……。




