ベルトラムの成長の兆し
「は、ははは……。多少、手間取ってしまったけど、僕達にかかれば、この程度の敵は、初戦闘だったけど、楽勝だよな!初戦闘だったけど!うん!コンビネーションも、ばっちりだ!」
さっきまで、半べそかいていたエレズが、虚勢を張っている。
しかし、他の者達は、だんまりだ。
何時もであれば、エレズの言葉に同調する、ベルトラムですら、浮かない顔で、俯いている。
どうやら、エレズより、ベルトラムの方が、少しはマシな様だ。
妖魔の強さを知った事と、自分達が、国王陛下すらも巻き込み、ニッサ村に、多大な被害を与えてしまった事を、今、漸く、理解出来たと言う風だ。
そして、エレズと言う男は、馬鹿だが、聡い男だ。
仲間の信頼が、揺らぎ始めていると悟り、足を止め、俺を睨む。
「けど、良くなかったなぁ。あれは、良くない!僕達が、必死に戦っているのに、ジャショウ君!君は、邪魔ばかりをして!僕が、的確な指揮を取ろうとしていたのに、戦えない癖に、偉そうに、講釈垂れて!君は、分かっているのかなぁ?自分の立場を!」
また、始まったか……。
ヤファとアデナは、凄い形相で、エレズを睨む。
俺は、別に、どうでも良いが……。
まあ、適当に、謝って……。
そう思った時、
「うるせえよ!勇者だか何だか知らないが、偉そうに!少なくとも、荷物持ち……。いや!ジャショウが、あの時、俺達をまとめてくれなければ、俺は死んでいた!お前こそ、分かっているのかよ!!」
ベルトラムが、俺の為に、キレた!
たった、一戦ではあるが、戦いの中で、ベルトラムは、考える事を、覚えた様だ。
俺は、少し、見くびっていた様だ。
アデナとヤファも、それに同調し、
「ジャショウ、ヤファの事、助けてくれた……」
「そうですね……。貴方が、何も出来ずに、震えている時に、ゴブリンの矢から、私達を守ってくれたのは、ジャショウさんです。頭が真っ白で、どうすれば良いのか、分からなくなった時、道を示してくれたのも、ジャショウさんです!」
「俺は、馬鹿だからよう。考える事を、放棄していたけどよう。俺達、このまま、やって行けるのかよ?」
「な、何を言っているんだ?現に、僕達、ゴブリンだけじゃなく、オーガも、倒したじゃないか!」
「ああ、ジャショウのお陰でな」
「違う!僕達の実力だ!そもそも、ベルトラムが、勝手に、突っ込んでしまったから、前線が、維持出来なくて、苦戦したんだろう?」
「ああ、そうだな。あれは俺の、失敗だ。けど、その状態を、立て直してくれたのは、ジャショウのお陰だ!」
「違う!勇者である、僕の言う事を聞いてくれれば、もっと上手くいく筈だ!!」
「ああ、そうかい?じゃあ、次からは、しっかり、指示を出してくれよ?勇者様!」
ベルトラムは、それだけ言うと、黙々と、歩き始めた。
他の者達もまた、冷めた目で、エレズを一瞥し、歩き出す。
やれやれ……。
王都に着く前に、死人が出なければ良いが……。
俺は、肩をすくめ、見えない追跡者と共に、盛大なため息をついた……。




