見えない影
やれやれ……。
結局、エレズ達は、パンをかじって、飢えを凌いだ様だ。
朝の四時……。
俺は、仮眠を取り終え、活動を始める。
ヤファとアデナは、すぐに起きて、俺の手伝いを始める。
この子達は、良い子なんだがなぁ……。
どうにか、エレズ達から離し、過酷な運命から、解放してやりたいのだが……。
それも、存外、どうにかなるかもしれぬ。
昨日から、俺達の後を追う者が、気配を殺し、見張っている様だ。
俺は、追跡者の方に向かって、にこやかに笑い、手を振ってみる。
更に、身を隠した。
妖魔では無いな。盗賊の類でも無い。
どちらであっても、襲う機会は、十分あった。
成程な……。
いくら、勇者と言う称号を持つ者とは言え、子供達だけで、この様な旅をさせるとは、考えづらい。
しかも、勇者とは、国にとっても、大きなステータスだ。
替えの利く、道具ではあるが……。
数がそろえば、他国に対して、優位な立場で居られる。
まあ、俺の、憶測であるが……。
国王、ルキウスと言う人物が、どう言う人物か、俺は、まだ、知らない。
ハラ婆さんの話では、寛大で、情に脆い人物だと言う。
故に、エレズの、浅はかな訴えに対しても、一々、対応したのだろう。
しかし、まあ……。
昨日からの、エレズ達の言動が、王の耳にも、筒抜けに成っているとは、エレズ達は、知る術も無い。
俺も、教えてやらないしな。
さてと……。
エレズ達を、叩き起こして、さっさと、旅の続きを、するとしようかねぇ……。




