躾は大事
俺達は、正午までには、予定のキャンプ地まで、到着していた……。
そう言えば、あいつ等に、飯を渡していなかったな?
まあ、どうでも良いか……。
俺は、てきぱきと、テントを建て、かまどを作る。
ヤファとアデナは、一休み。
かまどに火を灯し、二人に、ココアを作ってやる。
大喜びで、ココアを飲む二人……。
そう言えば、飯を作るのは、管轄外だったな?
まあ、この二人には、作ってやろう。
遅れて、四時間、漸く、エレズ達が、到着する。
その場に倒れこみ、
「水!全部持って、勝手に行くなよ!!」
ベルトラムが、声を荒げる。
俺は、素知らぬ顔で、
「明日からは、水と食料位は、各々で、管理した方が良いですね?」
「うるせえ!畜生……」
ベルトラムは、息も絶え絶え、最初の威勢も、どこへやら。
剣を投げ捨て、大の字に寝転がる。
勇者、エレズは、更に悲惨だ。
真っ青な顔で、嗚咽を漏らしている。
勇者と言えど、まだ子供……。
まあ、こんなものか……。
しかし、躾は大事だ。
俺は、冷淡に、
「こんなペースじゃ、明日、村に着く事が出来ませんよ?遅くとも、三時までには、到着しなくては、宿を取る事は、難しいでしょう」
「そんな事、君に言われなくても、分かっているよ!」
「左様ですか……。ここより先、ハラ様の力が、弱まります。道中、妖魔も出ましょう。今日の様な、無理は出来ません。遅くとも、五時には、出発する必要があります。それでは、本日の、私の業務は終わりましたので、食事を食べて、就寝させて頂きます」
「勝手にしろ!それより、僕達の夕食は、何処にあるんだ?」
「はあ?皆さんの荷物は、一度、お返ししたでしょう?勝手に、食べれば良いじゃないですか。私の役目は、あなた方の荷物持ちですから。それ以外の事は、一切、やるつもりはありません」
「なっ!?」
唖然とする、エレズとベルトラムを無視し、俺は、自分の料理を作り始める。
ヤファとアデナは、不安そうに、
「すみません……。私達、料理を作った事が無いのですが……」
「ヤファ……。料理分からない……」
「左様で御座いますか……?いずれは、四人で、旅する事と成りましょう。今の内に、簡単な料理位は、作れる様に成った方が良いでしょう。私で良ければ、お教えしますが……。一緒に作りますか?」
「そうして頂けると、助かります」
「ジャショウが、一緒に、作ってくれるの……?ヤファも、頑張る……」
エレズ達を尻目に、俺は、ヤファ達に、優しく、料理を教える。
態度を改めぬ内は、俺は、何もしてやらぬぞ?
子供だからと、甘やかす訳にはいかない。
勇者である事が、どう言う意味か、しっかり、考えるのだな……。
でなけりゃ、実戦に投入された時、真っ先に、死ぬ事と成るぞ……。




