旅立ち。出だしから、この調子か……。
「君が、僕達の従者かい?悪いけど、そこにある荷物全部!君が一人で、運んでくれるかい?」
出だし早々、これか……。
山の様な荷物に、俺は、あきれ返る。
何しに行くつもりか知らないが、こいつらは馬鹿だな。
ニル達の顔が、般若の形相に変わる。
前に飛び出して来たニルを制し、
「勇者様達。この荷物を、お持ちに成れば、よろしいのですね?」
何食わぬ顔で、荷物を、全て背負う。
そして、にっこり笑い、
「お嬢さん達も、遠慮なさらずに、荷物を預けて下さい。荷物を持ったまま、妖魔と戦うのは、大変でしょう?今は、気になさらずに、私に頼って下さい」
ヤファとアデナが、頬を染める。
遠慮がちに、荷物を渡し、
「アデナ・スティークと言います。旅は、初めてなもので、よろしくお願いします」
「や、ヤファ・セイラン……。ありがとう……」
「いえいえ。王都までの道のりですが、私こそ、よろしくお願いします。ジャショウ・シルフィールと言います。何かあったら、気兼ねなく、お申し付けください♪」
初めての旅に、緊張していたのだろう。
ヤファとアデナの顔に、笑顔が浮かぶ。
しかし、エレズ達は、気に入らなかったようだ。
唾を吐き、
「なよなよした奴だな!俺達に守ってもらおうと、必死だよ!」
「そんな事、言うもんじゃないよ、ベルトラム。僕達と違って、ただの人間なんだもん。仕方が無いよ」
「そうだったなぁ、ただの人間じゃ、仕方がねえか!」
ガキの癖に、嫌らしい顔で笑う。
俺は、気にも留めず、荷物を全て背負う。
そんな、俺の態度に、ベルトラムは、苛立ち、
「おい!ヤファ!そんな人形持ってたら、魔法が使えないだろう?それも、そいつに渡せよ!!」
「あっ!ナムちゃん!!」
ベルトラムは、ヤファの抱いていた人形を、乱暴にひったくる。
しかし、その拍子で、人形の腕が取れ、
「ナムちゃん!?」
ヤファは、見る見るうちに、涙目に。
ベルトラムは、慌て、
「な、何だよ!?俺は、悪くねえからな!!」
出だしから、この調子かぁ……。
先が、思いやられる……。
俺は、ヤファの頭を、優しくなで、
「ちょっと、お友達を、貸してくれませんか?私なら、治せると思います」
「ナムちゃん、治るの……?」
俺は、にっこり笑い、裁縫道具を取り出し、ナムちゃんと呼ばれた人形を、丁寧に、縫い直してやる。
元の様に、綺麗に治った人形を撫で、
「はい、治りました♪でも、剣聖様の言う通り、旅の途中で、妖魔に、傷つけられてしまうかもしれません。お友達を、私に、預からせて頂けないでしょうか?」
「ジャショウは、ナムちゃん、守ってくれる……?」
「ええ、頑張って、守らせて頂きます♪」
「分かった……。ジャショウに預ける……」
「ありがとうございます♪さあ、村の皆に挨拶して、出発しましょう」
ヤファが、俺の服の裾を掴む。
アデナもまた、にっこりと笑った。
男二人は、不貞腐れている……。
やれやれ……。
この旅は、どうなる事やら……?
子供相手に、俺も、キレない様に、気を付けなくちゃな……。




