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天翔雲流  作者: NOISE
現実と妄想の狭間で
1541/1794

旅立ち。出だしから、この調子か……。

「君が、僕達の従者かい?悪いけど、そこにある荷物全部!君が一人で、運んでくれるかい?」

 出だし早々、これか……。

 山の様な荷物に、俺は、あきれ返る。

 何しに行くつもりか知らないが、こいつらは馬鹿だな。

 ニル達の顔が、般若の形相に変わる。

 前に飛び出して来たニルを制し、

「勇者様達。この荷物を、お持ちに成れば、よろしいのですね?」

 何食わぬ顔で、荷物を、全て背負う。

 そして、にっこり笑い、

「お嬢さん達も、遠慮なさらずに、荷物を預けて下さい。荷物を持ったまま、妖魔と戦うのは、大変でしょう?今は、気になさらずに、私に頼って下さい」

 ヤファとアデナが、頬を染める。

 遠慮がちに、荷物を渡し、

「アデナ・スティークと言います。旅は、初めてなもので、よろしくお願いします」

「や、ヤファ・セイラン……。ありがとう……」

「いえいえ。王都までの道のりですが、私こそ、よろしくお願いします。ジャショウ・シルフィールと言います。何かあったら、気兼ねなく、お申し付けください♪」

 初めての旅に、緊張していたのだろう。

 ヤファとアデナの顔に、笑顔が浮かぶ。

 しかし、エレズ達は、気に入らなかったようだ。

 唾を吐き、

「なよなよした奴だな!俺達に守ってもらおうと、必死だよ!」

「そんな事、言うもんじゃないよ、ベルトラム。僕達と違って、ただの人間なんだもん。仕方が無いよ」

「そうだったなぁ、ただの人間じゃ、仕方がねえか!」

 ガキの癖に、嫌らしい顔で笑う。

 俺は、気にも留めず、荷物を全て背負う。

 そんな、俺の態度に、ベルトラムは、苛立ち、

「おい!ヤファ!そんな人形持ってたら、魔法が使えないだろう?それも、そいつに渡せよ!!」

「あっ!ナムちゃん!!」

 ベルトラムは、ヤファの抱いていた人形を、乱暴にひったくる。

 しかし、その拍子で、人形の腕が取れ、

「ナムちゃん!?」

 ヤファは、見る見るうちに、涙目に。

 ベルトラムは、慌て、

「な、何だよ!?俺は、悪くねえからな!!」

 出だしから、この調子かぁ……。

 先が、思いやられる……。

 俺は、ヤファの頭を、優しくなで、

「ちょっと、お友達を、貸してくれませんか?私なら、治せると思います」

「ナムちゃん、治るの……?」

 俺は、にっこり笑い、裁縫道具を取り出し、ナムちゃんと呼ばれた人形を、丁寧に、縫い直してやる。

 元の様に、綺麗に治った人形を撫で、

「はい、治りました♪でも、剣聖様の言う通り、旅の途中で、妖魔に、傷つけられてしまうかもしれません。お友達を、私に、預からせて頂けないでしょうか?」

「ジャショウは、ナムちゃん、守ってくれる……?」

「ええ、頑張って、守らせて頂きます♪」

「分かった……。ジャショウに預ける……」

「ありがとうございます♪さあ、村の皆に挨拶して、出発しましょう」

 ヤファが、俺の服の裾を掴む。

 アデナもまた、にっこりと笑った。

 男二人は、不貞腐れている……。

 やれやれ……。

 この旅は、どうなる事やら……?

 子供相手に、俺も、キレない様に、気を付けなくちゃな……。


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