閑話 死人の世界の、暖かな日常
「名無しよ!名無しは何処じゃ?」
「はいはあい!イザナミ様♪お目覚めに成られたのですか?」
「これ!名無し!私の側を、離れるなと、何度も言っておろう!」
「すみません……。気持ち良さそうに寝てたから、お目覚めに成った時、喉が渇いてると思って、向こうの果樹園から、果物を取って来たんです……」
「ふ、ふん!良い心がけじゃ!だが、取りに行くのであれば、わらわも行く!一時も、わらわの側を、離れるでない!」
「すみません……」
イザナミは、怒りながらも、目じりを下げて、名無しの持ってきた果実を、口につける。
そんな、イザナミの姿を見て、名無しもまた、嬉しそうに笑う。
あたりの転がる、死体を除けば、暖かな、男女のやり取り。
黄泉の国に来てもなお、人は、悪に手を染める。
いや……。
死したからこそ、死と言う概念から解放され、自由に振舞う。
人の本性とは、性悪説が、正しいのだろうか……?
この黄泉の国ですら、弱者が、踏みにじられる……。
その中で、突如として現れた、悪人の魂だけを食べる、魂食いの青年……。
その傍らには、常に、黄泉の女王が、寄り添っていた……。
やがて、この黄泉の世界も、姿を変える時が来る……。
天国と地獄……。
黄泉の国が、二つに分かれた時……。
この二人は、一体、どこへと、向かうのだろうか……?




