勇者達の我が儘
「ジャショウや……。儂の願いを聞いて、村の皆を、助けてくれているんだってのう」
「え?いや……。俺も、村の皆に、助けてもらっています。お互い様ですよ」
「そうかい、そうかい……。ほんに、この村は、良い宝物に、巡り合えたのう」
「はあ……」
ハラ婆さんは、俺の手を、優しく握る。
後ろでは、ニルが、ニコニコ笑い、
「で、ハラ婆さん。ジャショウ君にお願いって、何かあったのかい?」
「そうじゃったのう……。前に、この村には、勇者達が居ると、言ったじゃろう?」
「ああ、はい」
「武芸、魔法も、それなりに達者に成ったんじゃが……。それ以上に、口が達者でのう。戦いに専念したいから、従者を用意しろとなあ……」
「また、そんな、我が儘を言っているのかい!?どうせ、そんな、小賢しい事を言うのは、エレズの坊やだろう!」
ニルが、烈火の如く、怒り始める。
ハラ婆さんは、ため息をつき、
「まあ、落ち着きなさい……。あれは、あれでも勇者じゃ。それに、言っている事も、あながち、間違っておらん。仕方の無い事じゃ」
「仕方が無いって!だったら、大人の誰かを、随伴させればいいでしょう?なんで、ジャショウ君が!」
「拒絶されたのじゃよ。大人は、俺達に戦わせて、ただ、見ているだけか?それだったら、同年代の者の方が、まだ、我慢できると……」
「それを言ったのは、ベルトラムの坊やだね!暴れる事しか出来ない癖に、図々しい!!」
「落ち着きなされ、落ち着きなされ……。一応は、諫めたが、あの者達は、儂等に隠れて、国王陛下に、書状を送ったようじゃ。国王陛下から、王都までの道のりには、なるべく、勇者達の要望を聞き、供を随伴させよと、手紙が送られてきたのじゃ。了承せねば、この村が、見放されてしまう」
「そんなの、ただの、脅しじゃ無いのさ!ハラ婆さんは、王都でも、顔が利くじゃ無いのさ!ただ、言いなりになると言うの!?」
「そんなつもりは、断じて無い!!」
今まで、宥めに回っていた、ハラの目に、怒りの色が灯る!
不自由な足を叩き、仁王立つと、
「ジャショウを、お貸しするのは、王都までじゃ!!ルキウスの坊主には、返書を送った!!共に、ジャショウと言う少年を付ける。もしも、無事に返さなければ、儂は、一切の祈りをやめるとな!!」
「ハラ婆さん……。祈りを止めるって、本気なんだね……?」
ハラ婆さんとニルの会話の意味が、全然分からない……。
俺は、慌て、
「ちょっと、二人とも、落ち着いて下さい!私は、何を言っているのか、さっぱり、分からないのですけど……」
二人は、俺の言葉で、漸く落ち着く。
まったく……。
今、どう言った状況なのか、落ち着いて、教えてもらいたいものだ……。




