情を捨てるなど、無理な話か……。
季節は、春も近づく二月の中頃……。
この孤児院は、家庭菜園もしている様だ。
子供達も、手伝っているが、殆ど、アネスが一人で……。
俺は、早朝、鍬を持つ。
「シスター様!もう直ぐ、ジャガイモの、植え付け時期ですよね?俺も手伝います!もう少し、畑を、大きくしませんか?」
「ふふふ……。お手伝いしてくれるのは嬉しいですが、余り、無理をなさらなくて、良いのですよ?畑を、大きくするにしても、北側の空き地は、岩も多く、荒れておりますから」
「大丈夫です!俺に任せてください♪」
俺は、にっこり笑い、畑へと向かう。
子供達も、付いて来る。
確かに、酷い状態だ。
大きな岩が邪魔をし、雑草も生え、荒れ放題。
俺は、子供達の頭を撫で、
「危ないから、離れていてなぁ」
そう言い、子供達を、下がらせる。
そうして、大岩めがけて、
「はあっ!!」
拳を叩き込み、岩を粉砕する!!
アネスは驚き、子供達は、目を輝かす。
俺は、そのまま、拡張する場所の岩を、次々と砕き。砕き終わると、
「さあ、皆も、お手伝いしてくれるかな?俺が、粉々に砕いた岩で、壁を作るんだ♪一緒に頑張ろうか?」
「「「は~い♪」」」
子供達は、やる気も十分!
満面の笑顔で、駆け寄ってくる。
俺は、一番年少の、アミルと言う子を、おんぶ紐で、背中に背負い、子供達に、見本を見せてやる。
その間、ただ呆然としているアネス。
俺は、首を傾げ、
「どうしたのですか?シスター。壁を作ったら、畑を耕しますよ?種芋の方は、足りるでしょうか?」
俺の問いに、アネスは、ハッと我に返る。
慌てた様子で、
「あっ!はい!これだけ広くなると、ジャガイモだけじゃ、間に合いませんね!確か、大根とカブの種が、余っていたはず……。直ぐに、準備しますね!」
慌ただしく、駆けて行ってしまった。
さて、子供達と、俺だけに成った。
今の内に、大地に祝福を与えようかねぇ……。
子供達も、頑張ってくれたから、正午までに、壁が完成したな。
午後は、土を掘り起こし、耕すとしようかねぇ……。
俺は、昼食の前に、泥だらけの子供達を、お湯で、綺麗に洗ってやる。
アネスは慌て、
「ジャショウ君は、休憩して下さい!私がやりますから!」
「大丈夫ですよ。それより、シスターの方は、昼食の準備を」
「大丈夫です。サンドイッチを、作りましたから。それより、ジャショウ君は、ずっと、働きっぱなしでしょう?休憩して下さい!」
「はあ?別に、大した労力では、無いのですが……。お言葉に甘えて。それじゃあ、アミル、シスターと一緒に、お手手、キレイキレイしようなぁ」
「あい♪」
俺は、ふぅっと、一息つき、畑を眺める。
倍以上の広さに成ったか?
しかし、畑を耕すのが、少し遅いな。
冬の間に、一度、畑を耕し。土を、空気にさらし、灰と、たい肥を混ぜて、水はけの良い、土壌を作ってやらなくては。
まあ、今回は、ズルをして、大地に祝福を与えてしまったが……。
何年、この世界に居るか分からないが、来年からは、俺が、しっかり、管理してやろう。
なんて考える。そうこうしている内に、子供達も、綺麗になった様だ。
俺の側に駆け寄って、一緒に、畑を眺める。
子供達は、ニコニコ笑い、
「大きくなったね♪」
「ああ、広くなったな」
「お野菜、いっぱい出来るかな?」
「ああ、皆が頑張ったから、いっぱい出来るぞ♪」
「うん♪いっぱい頑張った♪お野菜も、いっぱい出来るよね♪」
子供達は、配られた、サンドイッチを食べながら、興奮した様子で、畑を指さす。
やれやれ……。
やはり、無理な話か……。
情を捨てるなど、俺には出来ぬ。
俺は、この子達の為に、戦う事に成るだろうなぁ……。




