万能の心理
ハラが、ゆっくりと、口を開く……。
「底の見えぬ魂……。セラフィル様の加護などでは無い……!全知全能……。儂の目は、確かに見えぬが……。心の目は、よく見えるよ……。セラフィル様が、昨夜、夢枕に立った……。この世界の、秩序を見守る者……。お主の事なんじゃろう?ジャショウ様」
この婆さん……。
ただ者じゃ無いな。
俺は、静かに頷く。
ハラもまた、静かに頷き、
「この世界の秩序は、人の手で、取り戻さなくてはならぬ。出来る事ならのう……。ジャショウ様のお力は、隠しておく必要がある!全知全能などと、神と肩を並べる力、人が知るべきでは無い」
「分かっております。私は、人を導く人間ではありません。理は、捻じ曲げられ。人と妖魔が、溢れ返ってしまった。私はただ、人が滅びぬ様に、最後の保険として、この世界に、降り立ったのです」
「分かっております……。残酷な、宿命ですのう……。今はただ、万能と言う真理で、その力を、お隠しに成られなさい」
「万能……?」
「ええ……。何事でも、こなす事の出来る、特別な真理です。多少、目立ってしまいますが……。中途半端に、隠してしまえば、余計、混乱を招きます。千年に一度、現れるか現れぬかと言う、特殊な真理です。今は、その真理を掲げ、道理を曲げて、この村の住民を、助けてはくれないでしょうか?」
「私は、別にかまいませんが……。この難局、人間達は、どう、乗り越えると言うのですか?」
「神は、その術を、既に人間に、お与えになりました……。この村にも、勇者と聖女、剣聖と賢者の真理を、持って生まれた子供達が居ます。そして、この村だけでは無く、各地で、その様な存在が、生まれ始めております。世界は、その者達が……」
「そうか……。既に、セラフィル殿は、種を蒔いていたか……。では、私は、しばらく、この村に、厄介になっても、よろしいのですか?」
「ええ……。そうして頂ければ、私も、助かります……。勇者と言うても、まだ子供。少々、難儀しております。いざと言う時の為に、ジャショウ様には、この村に、留まって欲しいのです。本来であれば、我が館に、招きたいと思うのですが……」
「先ほど言った通り、人の目がある……」
「ええ、それもありますが、先ほど言った、勇者達の育成に、我が館を使っております。窮屈かもしれませんが、孤児院の方に」
「分かりました……。色々、苦労を掛けるが、よろしく頼みます」
「いえいえ!苦労などと、とんでもない!どうか、我が子達の、助けと成って下さい」
やれやれ……。
最初に出会ったのが、この老婆で助かった。
さて、しばらくの間は、力を隠し、様子を見る事としようかな……?




