真理眼
「ハラ婆さん!良い子が、家の村を頼って、やって来たよ!この子にも、真理眼で、何が出来るか、見てやっておくれ」
「おやおや……。凄い子を、連れて来たようじゃのう」
ハラと呼ばれた、老齢の女性が、柔和な笑みを浮かべ、手招きをする。
それより、真理眼とは、何なんだろう?
俺は、不思議に思い、首を傾げる。
ニルは、ニコニコ笑い、
「このハラ婆さんは、昔、セラフィル様の神殿の、神官長を務め、魂を見る事が出来るんだよ♪人、一人一人に、神様は、得意なモノを、与えて下さっている。人はそれを、真理と呼んでいるのさ!あたしは、料理人の真理を持っているのさ♪だから、皆の為に、酒場をやっているのさ!お前さんは、どんな真理を、持っているのかねぇ?て、言うか、私ばかりが、喋り過ぎて、名前も聞いていなかったねぇ。ハラ婆さんの前だ!自己紹介をしておくれ」
「あっ!そうでしたね……。俺の名前は、ジャショウ。ジャショウ・シルフィールと言います。生まれた村は、名前も無いような小さな村で、妖魔達に、あっと言う間に滅ぼされて、今に至ります。村から出た事も無かったので、外の世界の事は、よく分かりません。色々と、ご教示頂ければ、幸いです。よろしくお願いいたします」
「立派なものだねぇ。知らない大人達の前で、物怖じせずに、しっかりした、挨拶をするじゃないのさ!家の近所の、悪ガキ共にも、見習ってもらいたいものだよ」
ニルは、再び、俺の背中を、バシバシ叩く。
本当、元気の良い、おばさんだ……。
ずっと、このおばさんが、喋っていて、俺も、ハラと言う婆さんも、置いてきぼりだ。
しかし、
「ニルよ……。儀式を始めるから、人払いをしておくれ。貴方は、外で、誰も入って来ない様に、見張っているんだよ」
「あら、ヤダ!私ばっかり、喋っちゃって!でも、ハラ婆さん、何時も、儀式の時に、人払いなど、した事が無かったのに……。どうしたんだい?急に」
「ニルよ……。儂も、もう、歳なんじゃよ。集中しなくては、心の目が、見えなくなってきておる。じゃから、二人にしておくれ」
「そうかい……。でもねぇ、ハラ婆さん!まだまだ、ハラ婆さんには、元気で居てもらわなくちゃ!あんまり、気弱な事を、言わないでおくれ」
「はいはい……。若い者は、年寄りを、こき使うのう」
ニルは、ハラ婆さんを元気づけ、家から出て行った……。
さて、ここからが、本題だ……。
おそらく、この婆さん……。
俺の正体に、気付いているな……?




