一年の猶予
「ジャショウ君。ヨセフ国王陛下が、お呼びに成っております。先程、王宮の方から、使者が参りました」
「今度は、何だ……?」
俺の横で、エローラと並び、ヨシカが、肩をすくめる。
ヨシカは、何かを知っている様だ。
訝しげに思う、俺の顔を見て、
「また、下らない案件で。それでいて、無視の出来ない話ですよ。まあ、兄上の、愚痴を聞いてやって下さい」
また、どうせ、例の貴族絡みの話か。
面倒臭い……。
俺もまた、不快感を隠せず、ヨシカと共に、王城へと向かう。
城へと行けば、門兵達が、俺達を見て、苦笑いを浮かべる。
俺達に向かって、敬礼し、
「本当、参ってしまいますよ……。同僚は、あの騒動の時、アッカ地区の警備に出動したのですが……。エネス地区を相手に、命など、賭けていられないと、愚痴っておりました。正直、我々では、命が幾つ有っても足りません」
「ああ。俺達も、君達と矛を交える事は、したくは無いな。同僚にも、伝えておいてくれ。私も、目を光らせておくから、君達も、例の貴族達には、注意をしておいてくれと」
「はっ!既にまた、あの者達は、下らぬ讒言を、言いに参りましたよ。本当に、ヨセフ国王陛下も、何故、あの様な者達を、相手にするのか……?理解に苦しみます」
「まあ、そう言うな。あの者達とて、所詮、形だけではあるが、スターリーの街の、一地区を任されている領主だ。無視する訳にもいくまい。また、何をしでかすか、分からないからな。ある意味、君達の為だ」
「はぁ……。そうですね……。私達も、あの様な者達を守り、ジャショウ様達と、戦いたくはありません」
「まあ、そう言う事だ」
ヨセフ達には悪いが、あいつ等に、一年間の猶予を与えた事は、愚策だったな。
さて……。
また、ヨセフの、愚痴でも聞きに行くとしようか……。




