貧富
あの、襲撃より、一週間……。
まず、シャーメルとボーキは、爵位を剥奪され、私財が没収される。
その後、斬首とはならず、鞭打ち百回。ボロボロの体のまま、炭鉱送りと成った。
また、アッカ地区とノワー地区は、ヨシカ達の息のかかった者が、統治者と成った。
それでも、ガッツ達は、納得出来ない。
度重なる、エネス地区への、妨害行為。
その上、今回は、物理的に、襲撃を企てたのだ。
まあ、一方的に、俺達の方が、暴れただけなのだが。被害者は、俺達の方だ。
このまま、アッカ地区とノワー地区に、宣戦布告しても良いが……。
まあ、冗談だ。
ヨセフ達にも、半泣きで、止められてしまったからな。
アッカ地区とノワー地区を守る騎士達も、怯えてしまっている。
取り敢えず、シャーメルとボーキの一族は、平民に堕とされ、スターリーの街から去った。
没収された私財は、慰謝料と言う事で、エネス地区に分配される事に成ったが。俺は、それを、丁重に断り、アッカ地区とノワー地区に、寄付する事とした。
これにも、意味がある。
まず、アッカ地区とノワー地区の民が、エネス地区の敵では無いと、内外に証明する為。
そして、ガッツ達に、あちらの民も、被害者であると、悟らせる為だ。
これで、漸く、ガッツ達も、冷静さを取り戻した。
ただ、奇麗事だけでは、話が終わらない。
シャーメルとボーキに、扇動され、エネス地区を襲った者達が、迫害される様に成ってしまった。
まったく、どうしたら良いのだ?
ガッツ達に、手酷くやられ、五体満足、生きられぬ者達が、その上、怒りの矛先を、向けられている。
足をやられ、びっこを引く者達。
片腕をやられ、生活も、儘ならない者達。
また、それ以上の者達も……。
罰は、十分、受けただろう?
どうしたら良いか……?
仕方が無い。
憔悴しきった彼等を集め、酷ではあるが、再び、ガッツ達の前で、謝らせる。
必死に謝る、彼等を見て、漸く、ガッツ達も、冷静さを、取り戻した様だ。
俺は、ガッツと顔を見合わせ、静かに頷き、
「二度目は無い!そう心得よ……!」
霊蝶が、天に舞う。
襲撃者の、体を癒し、静かに消える。
許された事と、失った体を、取り戻せた事で、彼等は、涙を流して喜ぶ。
もう、二度と、こんな事はしないと誓い、彼等は、何度も頭を下げ、帰って行った。
スターリーの街内で生まれた、貧富の差が、今回の事件を生んだ。
仕方が無いか……。
俺が、もう少し、彼等のフォローを、する事としよう……。




