裸の王様
彼等の、暴走は、まだまだ続く……。
しかし、その暴走も、結局、自分達の首を、絞める事に……。
アッカ地区の領主、シャーメル伯爵は、エネス地区の絹を、全面的に、売買禁止にした。
もっとも、それに賛同したのは、落ちぶれた、貴族達だけだが……。
まったくもって、我が地区には、被害が出ていない。
逆に、シャーメル伯爵の妻が、粗悪な、アッカ地区の絹で出来た服に、我慢が出来なくなり、夫婦喧嘩が勃発。
本当、泣けてくるねぇ……。
今と成っては、粗悪な服を身に纏い、喚き散らしているシャーメル伯爵を、人々は、裸の王様と揶揄し、笑われる事と成った。
ボーキ伯爵の方も、自領である、ノワー地区に、大金をつぎ込んで、巨大な劇場を、建設し始めたのだが……。
前回の、暴挙が、仇と成った。
多くの劇団、芸能人が、そっぽを向いている。
その上、ヨセフは、見せしめの様に、エネス地区に赴き、シャルル劇団の劇を見ると言う……。
結局、建設途中で、劇場建設は頓挫した。
多額の、借金を残して……。
この二人の暴走が、皮肉にも、他の貴族の暴走を、止める事と成ったのは、笑い話の様だ。
これが、積み上げて来たモノの違いさ。
人々の信用も、技術の差も、たった一年で、埋める事など出来ぬ。
逆に、白薔薇の徒であった、貴族達の方が、上手くやっている。
と言うか、何もやらない。
一切の利益を、放棄している。
ただ、一つ、やった事があったが……。
俺とアルブレッドに、頭を下げ。自分の地区とエネス地区に、乗合馬車を、走らせてくれと言ってきた。
中々、強かに成ったと言えば良いか?
最小限の税金で、民を集め。
エネス地区への、交通手段を、確立させたのだ。
ただ、それだけの事……。
しかし、効果は、顕著に表れた。
スターリーの街に、移住出来たのは良いが、手元に、お金の無い者達。
成人を迎え、独立したのは良いが、まだまだ、収入が、安定しない者達。
そう言った人々が、多く移り住んでいる。
何気に、将来を見据えると、ライバルに為り得る、地区と成ったな。
それで良い……。
俺達とて、スターリーの街を、掌握しようとしている訳では無い。
未だ、距離があるが、彼等とも和解し、それなりの関係を、築き始めている。
さて、この一年で、スターリーの街は、どう変わってゆくかなぁ……?




