無能
「パアパ!帰って来た♪」
「お兄ちゃん♪」
館に戻れば、センカとツクヨが、お出迎え。
俺は、二人を、抱き上げる。
「良い子にしてたか?」
「「うん♪」」
はぁ……。
そろそろ、冒険がしたい!
子羊の嘶き亭の、依頼は、こなしているが、あんなのは、冒険とは違う。
空間転移し、ドラゴンレベルを、瞬殺!
俺は、もっと、のんびりと、シャル達やセンカ達と、旅を楽しみたいのだ。
何故、領主なんかを、やっているのだ?
我が地位を、奪おうとした者は、多く居たが……。
無能……。
エネス地区の、管理も碌に出来ず、消えて行った。
今と成っては、エネス地区の領主に、成ろうと言う気概のある者は、殆んど存在しない。
まあ、エネス地区に、ちょっかい出す者は、未だ、多く居るが……。
現に、
「ジャショウ様……。アッカ地区から、絹の、生産工場を創るから、エネス地区では、控えてくれる様に、要請が有りました」
「はあ?知るか!他の地区が、何をすると言っても、エネス地区には関係無い!そもそも、絹の生産に着手したのは、エネス地区が、最初だぞ?そんなの、無視だ、無視!」
「ジャショウ君。また、ボーキ伯爵が、騒いでおります。自分の地区で、芸術を推奨するから、多くの芸人や芸術家達を、移住させろと言う事です」
「その者達が、移住を望むのであれば、俺は、何も言わない!しかし、望んでいないと言うのであれば、その件も、無視だ!」
まったく……。
阿呆の集まりか?
アルサ達は、肩をすくめる。
ついでに、様子を見に来ていた、ヨシカまで、呆れた顔で、ため息をついている。
アイツ等は、俺達から、何かを盗む事しか、考えられないのだろうか?
やれやれ……。
アイツ等が、消えるまで、後一年……。
俺の苦労は、しばらく続きそうだ……。




