超越者
時間にして、僅か数秒……。
しかし、俺には、永遠とも呼べる、地獄のような時間。
俺の意思を無視し、〝それ〟は、俺の中へと、雪崩れ込んで来る!
その中で、分かった事がある。
こいつは、ホレスとか言う奴が言う通り、俺自身だ!
まあ、少し違うが、俺自身が、行きつく先の未来だ。
それが、一つや二つじゃ無い!
八十万の奇形の魂が、混在している……!
化け物……!
俺は、生まれて初めて、恐怖を覚える。
怖い……!
恐怖に呑まれ、恐怖に理性を削ぎ落とされそうになり、俺は、初めて、本気に成った!
魂を燃やし、燃やし!燃やし高めて、この化け物を、喰らい尽くす!!
不可能だと、分かっていても、足掻いてやる!!
喰らい、喰らい!喰らい尽くして!!
闘い、闘い!闘い続けて!
俺は、限界を知った……。
真っ白に、燃え尽きる……。
後は、先人達の様に、この化け物に、食われる定めか……?
その時……!
(名無しよ。お主は、わらわが認めた、唯一の男だ!何を、呆けておる?前にも話したじゃろう。お主の魂は、無限の可能性を秘めておる!全てを喰らえ!邪聖よ!!)
この声は……!
懐かしい……。
大切な人の声……!
αよりも、遥か昔。俺の魂の、一部となってくれた人の声……!
「イザナミ!!」
俺の魂が、爆発する!
俺の後ろには、二つの影が!
αとイザナミ!!
二人が、俺の背中を、優しく押す!
俺は、凶悪な笑みを浮かべ、
「喰ろうてやるわ!!」
雪崩れ込んで来る力を、貪欲に喰らい、俺は、咆哮を上げる!!
俺の中で、力と言う概念が、消失する。
全ては、無であって全!
無限であったそれは、役目を終えて、その姿を露にする。
白く輝く、不完全な神……。
蛯子か……。
俺は、その小さな赤子を、優しく抱きしめる。
手も無い、足も無い、口も無い……。
しかし、確かに、
(ありがとう……)
その赤子も、力と成りて、俺の魂に、吸収される……。
白髪の、美しき少年が、俺の魂に向かって、駆けて行く……。
少年は、俺の魂に触れ、
『朧……。それが、僕の名前だよ♪僕も、貴方の一部に成ってあげるよ!ずっと、一緒だよ♪』
「邪聖だ……。俺の名は、邪聖……。朧……。我が魂の中で、ゆっくりお休み……」
『邪聖!うん♪ずっと一緒……!邪聖、お休み♪』
イザナミ、α、朧……。
俺の魂は、多くの者に支えられ、金色に輝いている……。
朧も俺も、欠落していたが故に、無限の可能性を秘めていた。
そう、欠落していたが故に、支え合う重要性を、知っていたのだから……!
超越者か……。
途方も無い力を、手に入れちまったなぁ……。




