不格好な道化
マコールの死体が、エネッサの街より東の、小さな湖に上がった。
服は破られ、今回は、酷い損傷で、最初は、誰の死体かも、分からぬほどであったと言う。
奴は、恨みを買い過ぎていた。
素人の犯行か?
はたまた、盗賊ギルドが、多少なりとも、落としてしまった信頼を、回復させる為の報復か?
事件は、未だ、闇の中だ。
まあ、どうでも良いが……。
ただ、この事件は、リムサやジェフィール達の心を、大きく、蝕む事と成った。
彼等は、アネール家の一室で、見えない敵に怯え、錯乱状態にあるそうだ。
最早、アネール家当主、ゴーク男爵は、この二人に、嫌気がさし、見放すべきか、本気で悩んでいる様だ。
しかし、館から放り出せば、確実に、この二人は殺される。
そこが、ゴーク男爵の、甘さよ。
娘のリムサが、我が儘に育ってしまったのは、彼の所為とも言える。
悩み、悩みぬいて、結局の処、フィリス三世に、頼らざるおえなくなった。
その結果が、俺の、登城……。
謁見の間には、険しい顔で、頭を抱えるフィリス三世。俺は、軽いめまいを覚える。
もう、結論は、出ているだろうに……。
俺の口から、答えを求めたいのだろう。
フィリス三世は、簡素に、
「ジャショウよ。どう思う?」
「はぁ……。もう、答えが出ているのでしょう?あの悪女に騙されていたとは言え、不義に不義を重ねた男。されど、元は王太子……。勘当され、男爵家に、婿入りしたとは言え、やはり、王家の血を引く者です。このまま、ゴーク男爵にまで見放され、放り出されてしまえば、間違いなく、盗賊ギルドの、報復を受けます。世間の評価がどうであれ、如何に勘当したとしても、王家の威信に関わります。最低限の、衣食住を与え、国で保護……。いや、何処かに、幽閉するべきかと」
「そうじゃのう……。出来れば儂より早く、死んでくれると助かるんじゃが」
「まあ、甘やかさない事です。寝床を与え、最低限の食事を与え、味方を作らせない為に、人との接触を、固く禁ずる。少なくとも、シャスター様が、王位を継承するまでは、徹底するべきだと思います」
「はぁ……。若気の至りと言うが、我が子ながら、何とも情けない……。そうなると、あの忌々しい女も、保護せねばならぬか。実に、不快だ」
「盗賊ギルドにまで、手を出してしまいましたからね……。残念ですけど、そうなるまで、何もしなかった、我等の咎です」
咎と言ったが、だからと言って、どうする事も、出来なかったのだがな。
多くを巻き込んで、無様に終わったな……。
場合によっては、人知れず、処刑と言う選択もあるが……。
まあ、そこまでする必要も無いだろう。
実の親にまで、死を望まれて、ひっそりと生きるのだ。
まったく……。
最後まで、不格好に踊る、哀れな道化よ……。




