貴様等に、味方など……。
「んな事やらなくてもなぁ!その悪女を殴って、吐かせれば良いだろうが!!」
おおと!
暴力に訴えますか?
流石、脳筋!
確か、近衛隊長の子息、ボルトと言ったか?
アーニャに向かって、襲い掛かる!!
そんな事、俺の目が黒い内は、許す訳が無いだろうが!!
ドン!
「あっ!?」
ボルトの腕が、あらぬ方向に曲がる!!
そのまま……!
ガン!!
「へぶしっ!?」
ボルトの、突き出した腕をへし折り、顔面に、拳を叩きこむ!!
腕はへし折れ、歯は、ボロボロと零れ落ち、鼻がひしゃげる!!
随分と、手加減したんだがなぁ……。
やはり人間は、脆い生き物だ。
俺は、冷淡に見下し、
「国王陛下に伝えろ!この者達は、真っ黒だと!」
誰に言う訳でも無い。
しかし、一つの影か消えた……。
リムサが、悲鳴を上げる。
俺は、冷淡に笑い、
「早くしろ……!嘘発見の呪文を、早く掛けるんだ!それか、非礼を認め、そのぼろきれを連れて、さっさと、消えるんだな」
ジェフィールは、震えながらも、俺を睨み、
「わ、私達に、この様な事をして……!」
「人の心配をしているのなら、自分達の心配をするんだな。国王陛下は、酷く、お怒りに成られていたぞ?」
「父上は、関係無い!私が!許さないと言っているのだ!!」
「ふん……。だったら、どうする?」
「誰でも良い!その者を捕らえろ!この狼藉者は、死罪に価する!!」
ジェフィールは叫ぶが、誰も、動こうとしない。
冷やかな目で、ジェフィールを見詰める。
ジェフィールは、苛立ち気味に、
「何をしている!?これは、王命だぞ!!」
「王の名を語ったか……。これは、反逆罪も、加わるのかな?」
「な、何を言っている?私は……!」
周りの者達が、また一人、また一人と、去ってゆく。
ジェフィールは、震えた声で、
「私は、王太子……」
その場で、ガクッと項垂れる。
追い打ちとばかりに、ジェフィールの付き人が、慌てた様子で、駆け寄って、何か耳打ちする。
みるみる、青ざめてゆく、ジェフィールの顔。
こりゃあ、フィリス三世も、ご立腹だな。
恐らく、魔法の通信機で、報告されたのだろう。
ジェフィールは、わなわなと、体を震わせ、
「誰だ!誰が父上に、告げ口をした!?私は、この国の王子だぞ!!言わぬか!!」
ジェフィールの声は、無情にも木霊する。
馬鹿が……。
もう、ここには、お前の味方など、存在しないんだよ。
哀れな道化には、退場願おうか……?




