王太子?(笑)
ノーシャリオ学園に潜入し、早、一週間……。
フィリス三世には悪いが、ジェフィールと言う男は、碌でも無い男の様だ。
そして、その取り巻きも……。
マーキン・スカナール侯爵が息子、マコール・スカナール。
武術、勉学共に、そつなくこなす、秀才タイプの男。
ただし、ナンパな男で、常に、女性間のトラブルを、多く抱えている。
続いて、グィッパー・ヨートルダム伯爵が息子、ネクス・ヨートルダム。
学園内では、天才的な、魔法の使い手で、少々、内向的。
まあ、あくまで、学園内での実績であるが……。
最後に、近衛隊長が息子、ボルト・フォルネ―ル。
面倒臭い……。
一言で言えば、筋肉馬鹿だ。
そして、王太子を含め、この四人を垂らし込んだ女の名は、リムサ・アネール。
家は、男爵家と聞くが……。
脳味噌、お花畑。アーニャに、苛められていると、主張している。
ハッキリ言うが、現実問題、そんな事実は無い!
と言うか、アーニャに、そんな暇は無い!
早朝から、王妃と成るべく、勉学に励み。授業が終われば、俺達を連れて、図書館に缶詰。
俺達が来る前も、他の生徒に、勉学を教えていたと聞く。
その上、その人柄から、人気が高く、多くのお茶会に、出席している。
一段落着いたら、学区内の、教会に赴き、神に祈りを捧げ、身分を気にせず、学園の食堂で、他の生徒と共に、食事を食べる。
その後、身を清め、授業の、予習復習をし、十時には、消灯……。
リムサとか言う女はおろか、王太子(仮)とも、交流を持っていない。
アリバイは完璧。
完全な、白だ。
それでも、あの王太子(笑)は、理解出来ない様だ。
リムサと言う女と、取り巻き三人を連れて、放課後の図書館に、乗り込んで来る。
颯爽と登場し、
「アーニャ!リムサに対する、陰湿な苛めを止めるんだ!!」
何言ってるんだ?コイツ……。
他の生徒達も、眉を顰める。
アーニャは、完全に無視。
王太子……。
ああ!もう!
こんな馬鹿を、王太子と呼ぶのも馬鹿らしい!
ジェフィールは、そんな、アーニャの対応に怒り、顔を真っ赤に染め、
「アーニャ!!」
力任せに、アーニャの手を掴もうとする!
だが……!
「はいはい……。女性に暴力は、よろしく無いですよぉ」
俺が、その手を、はたき飛ばす!
軽くやったつもりだが、ジェフィールの手は、真っ赤に腫れ、
「貴様!私を、誰だと思っているのだ!?」
「あ?浮気者の、馬鹿王子だろう?」
俺の言葉に、図書館内に居た生徒達が、爆笑する。
ジェフィールは、そこまで赤く成るのかと言うほど、顔を真っ赤にし、
「わ、私は、この学園の、秩序を守る為!」
「馬鹿か?秩序を乱しているのは、お前達の方だろう?お前、鏡に向かって、喋っていろよ?」
「貴様!!」
ジェフィール達は、怒りに震えるが、周りの笑い声は、大きく成るばかり。
俺は、呆れた顔で、
「はぁ……。そこのお嬢ちゃんが、家のお嬢様に、何時!何処で!何をされたのか、証拠と一緒に、言ってもらうか?」
「証拠だと?この、ズタズタに切り刻まれた、ノートが目に入らないのか!!」
「物的証拠ですか?まあ、そちらの女性が、偽造する事も出来るモノですよね?それでも、証拠とすると仮定して、何時!何処で!お嬢様が、その様な事をなさったと、結論付けたのか、お話し願おうじゃないですか!」
「い、何時と言うのは……。正確な時間までは、分からん!愛しのリムサが、部屋に帰った時には、既に、こうなっていたのだ!」
「それでしたら、何故!お嬢様がやったと、言い切れるのですか?」
「それは……。リムサが、アーニャがやったと……」
「答えに成ってません!そもそも、家のお嬢様には、完全な、アリバイがあります!授業が終わった後は、ご学友と、お茶会をし。その後すぐに、図書館で、勉強会!それが終われば、教会に行き、礼拝をし。ご学友達と、食事を取り、門限の時間と成ります!部屋に戻った後は、身を清め、貴方方とは違い、授業の予習復習をし、消灯いたします!その間、お嬢様が、お一人に成る時間はありません!何故!お嬢様がやったと、言い切れるのですか?」
「それは……」
押し黙る、ジェフィール……。
残りの三人も、気まずい顔で、顔を見合わせている。
しかし、リムサと言う女だけは、
「そんなの、あんた達が、口裏を合わせているだけじゃない!ジェフィール様!私、このままじゃ、怖くて、怖くて……」
「ああ、大丈夫だよ、リムサ!リムサの言う通り、お前の言う事など、何のアリバイには成らない!」
「馬鹿なんですか?貴方方は……」
俺は、心底呆れた顔で、ジェフィールを見詰める。
ジェフィールは、再び、顔を真っ赤に染め、
「貴様は、王太子である私に、何度馬鹿だと言えば、気が済むのだ!訂正しろ!」
「馬鹿を馬鹿と言って、何が悪い?自分が、王太子であると言う自覚が有れば、少し考えれば、分かるだろう?」
「何……?」
コイツ、本当の馬鹿なんだろうか?
フィリス三世には悪いが、文武両道と言うのも、怪しい物だ。
俺は、最大にため息をつき、
「あのなぁ……。王太子が、自由に、学園生活を、送れる筈が無かろう?あんたにも。アーニャお嬢様にも。そして、最近、貴方の周りに付きまとう、そこの女にも!見えない護衛が……。いや、見張りと言うべきか?国王陛下の息のかかった者が、目を光らせているんですよ……。余り、ふざけた事を言っていると、廃嫡されますよ?」
「う、嘘だ!?」
「面倒臭い奴等だなぁ……。馬鹿でも分かる道理を、理解出来ないとは……」
ジェフィールの顔は、どんどん、青白く成ってゆく。
俺は、更に、追い打ちとばかりに、
「そこの兄ちゃん、魔法が、得意だったよなぁ?」
「わ、私か!?」
急に呼ばれて、魔法に関しては、学園随一と呼ばれるネクスが、目を泳がせる。
俺は、苛立ち気味に、
「そうだよ。あんただよ!精神系呪文で、嘘を見抜く魔法が、有っただろう?俺が許すから、アーニャお嬢様にかけてくれ!ただし!小細工をしたり、身の潔白が証明されたら、それ相応の罰は、覚悟しておけよ?」
更に一歩……。
更に一歩と、ジェフィール達を、追い詰める。
さてと……。
どうやって、落とし前を、付けてもらおうかなぁ……?




