仮初の平和の中で……。
ガイア達の事は、フィリス三世達に任せよう。言うて、俺達に、何かが出来ると、思えないしな。
今日は、ニーナとマヤと、お買い物。の筈だったんだが……。
「師匠♪この服、私に、似合うかしら?」
「お姉ちゃん♪きっとこの服、お姉ちゃんに似合うよ♪」
「マヤちゃん♪お母さんが!何でも好きなモノを、買ってあげよう!」
勇者パーティーが、勝手に付いて来る。
俺とラフィーは、顔を見合わせ、米神を押さえる。
露骨に、嫌な顔をする、ニーナとマヤ。こいつ等、スキンシップが激し過ぎる。
しかし、それも、目を瞑る事としよう。
こいつ等は、こいつ等で、必死に頑張っているからなぁ。
日々、苛烈な訓練をし、魔族を、打ち破っている。
やる事は、予想以上に、やっているのだ。
随分と、レベルが上がっている。今の、彼女達なら、今の魔王を、倒す事が出来るだろう。
既に、支度は整った。しかし、今は、仮初の平和……。戦士達にも、休息は必要だ。
多少、はっちゃけ過ぎだが……。
年相応の、無邪気さを見せる、少女達と、言った処か。
俺達は、大所帯で、街を練り歩く。
服見てぇ。
アクセサリーを見てぇ。
クレープを食べる。
本当、魔王なんて、居ないんじゃ無いかって、思わせる。
平和なモノだ……。
しかし、そんな平和の中でも、
「ちょいと、御免よ!」
焦った風に、俺にぶつかり、駆け抜けようとする少年。
「ちょっと、待った!」
俺は、少年の右腕を、軽く捻り上げる。
「いつつつ!?何すんだ!!」
「俺の懐から、財布を取って、良く言うよ」
少年の、捻り上げられた手から、俺の財布が落ちる。
俺は、それを拾い、
「今回は、見逃してやるが……。次やったら、容赦しないぞ?」
「うるせえ!馬鹿!!それは、俺が拾った財布だ!自分の物だと言うなら、一割寄こせ!」
「お前なぁ……」
悪態垂れる少年に、少し、お灸をすえてやった方が、良いだろうか?
ゆっくり剣を抜き……。
「な、何だ、テメエ!?言い返せないからと言って、俺を斬るって言うのか!?」
「さあ、どうしようかなぁ……」
怯える少年の前で、俺は、ゆっくり、剣を振りかざす!
斬!
俺の剣は、少年の衣服だけ斬り、何事も無かった様に、剣をしまう。
尻もちをつく少年……。
少年……?
さらしを巻いているが、膨らみかけた胸。
余りの出来事に、顔面蒼白。目を見開いた顔は、中性的で……。
男だったら、美少年……。
女だったら、美少女と言った処か。
うん。
美少女だ……。
少女は、我に返り、胸元を隠す。
しかし、それ以上に、隠さないといけない物が……。
少女の服から大量に落ちた、誰の物とも分からぬ、財布の山。
周りの者達が、ざわつき始める。
少女は、目頭に涙を溜めて、さっきとは、打って変わって、真っ赤な顔で、
「畜生!覚えていろぉ!!」
啖呵を切って、走り去ってしまった。
やれやれ……。
何だったんだ?一体……。




