猿
「国王陛下……。我等、ネガレカ教の失態で、心害した事、誠に、申し訳ありません。あの二人には、破門を言い渡したのですが、どうも、言葉が通じない様で……」
「カスター殿、貴公が、謝る事では無い。全てに元凶は、前大司教、ジョセフに問題がある!そなたは、よく頑張っているよ」
「はっ!勿体無きお言葉」
この男が、現ネガレカ教大司教、カスター。元は、ジョセフの横暴に、真正面から立ち向かい、ギーラ教会を、追われた男だ。
悪い匂いはしない。
ネガレカを、心から信仰し、弱者の救済に、その身を粉にして、働いている。
中々の、人格者だ。
ジョセフ在位の時、ギーラ教会は、金銀財宝で、飾られていたが、カスターが、大司教に就任した際、それらを売り払い、民達の、助けとした。それ故に、民達からの、人気も高く、ギーラ領の復興が、予想以上の早さで、成される事と成った。
信仰心の薄い、オールド帝国のガイルでさえ、一目置いている。
そう、今のギーラ教会は、腐敗した司祭を排除し、生まれ変わっているのだ。
ネガレカ殿も、満足であろう。
故に、俺達三人、やり場の無い怒りに、何とも言えぬ顔をする。
地位を奪い、宗教的破門を言い渡し、それでも、臆する事無く、暴走を続ける、ガイア達……。
最早、道理が、通用しない。
奴等が、どの様な思考をしているのか、さっぱり理解が出来ないのだが……。
ゴブリンにすら勝てず、死を恐れ、逃げ回る事しか出来ない奴等が、何故、勇者や聖女と成って、魔王と対峙し様と言うのだ?
奴等が、何に成ろうとしているのか?
奴等が、何を成そうとしているのか?
さっぱり、見当がつかない。
現実的な、結論に辿り着かぬまま、俺達は、ただ、頭を悩ます。
奴等が、何を求め、何を欲しているのか、分かってはいるよ?
単純に、富、名声、人々の尊敬……。
だが、奴等は、余りに、幼稚過ぎるのだ。
結果も過程も無い。
何も無い奴等に、全てを与えてやる事は出来ない。
それが、現実だ……。
奴等も被害者。
故に、甘やかし過ぎたのかも知れない。
いや、甘やかし過ぎた。
と言うより、罰を罰と、理解出来ないほどの、知性しか持っていないのだ。
地位を剥奪しても、勇者と言い張り。
ネガレカ教を、破門されても、その意味が、理解出来ない。
宗教的破門は、それ即ち、死後、地獄に堕ちると言う事だ。
それが理解出来ないほどの信仰。
いや、子供以下の、信仰心だと言う事か。
神に、認められし者が勇者……。
しかし、奴等は、神を信じず。神を、蔑ろにしている。
いや、違うか……。
神が、自分達を救う事が、当然だと思い。それ故に、人間達も、自分達に、跪くのが、当然だと思っている。
厄介過ぎる……。
全てを失っても、失った事を否定し、権利を主張する。
これでは、言葉を喋る、ただのサルでは無いか。
そう考えると、幽閉も、妥当な判断かも知れない。
手癖に悪いサルは、檻の中に入れておくのが、最善であろう。
殺してしまえば、一番、楽なんだがなぁ。
本当、厄介な、連中だよ……。




