厄介な存在
「ふざけるな!俺は、勇者だぞ!勇者にこんな事をして、ただで済むと思っているのか!!」
見苦しい……。
フィリス三世も、青筋を浮かべ、
「相変わらず、成長しておらんな……。貴様の様な奴が、勇者の訳が無かろう。ひっそりと、生きていれば、良かったものを……」
「ああ?さっさと、神剣を返せよ!そうすりゃ、俺が、勇者として、魔王を倒してやるからよ!」
「愚かな男だ……。神剣が有って、漸く、ホブゴブリン……。今のお主は、ゴブリンも倒せぬ!そんな男に、勇者が務まるか!!」
「糞、糞!糞ぉ!!」
哀れな男だ……。
全てが、思い通りに行かず、癇癪を起している。勇者や聖女など、この者達には、荷が重すぎる。なのに、何故、背負おうとする?
理解に苦しむ。
結局奴等は、幽閉される事と成った。
ガイア達は、引きずられる様に、謁見の間を、追い出されてしまった。歪んだ性格の奴等だが、憎みきれぬ。親に捨てられ、世界に見限られた。奴は、奴なりに、世界に馴染もうとしたのだ。
努力は、足りなかったが……。
しかし……。
一度は、奴も、勇者と呼ばれた。何も持たない孤児が、何の後ろ盾も無く、勇者と呼ばれたのだ。
奴の全てを、否定する訳にはいかない。
逃げて、逃げて、逃げて!
同胞を見捨て、時には殺し、褒められた、所業では無いが、奴は、生き延び、勇者と成った。周りの人間も、それを、認めたのだ。
奴だけの、責任では無い。
哀れな、道化よ……。
謁見の間に、静寂が訪れる。
フィリス三世は、深々と、ため息をつき、
「ジャショウよ。あれは、どうするべきかな?」
「どうしようも、無いでしょう……。ポメット達が、魔王を倒した後に、恩赦として、解放する。その後、エルバートから、追放でしょうか……?」
「何処か、あれを、預かってくれる国が、有れば良いのだが……」
「魔王討伐より、難解な、問題ですね」
「「はぁ……」」
俺とフィリス三世は、頭を抱え、深く、息を吐く。
味方とも、呼べないが……。
殺せぬ味方ほど、時に、厄介なモノは無いな……。




