御前試合
御前試合が始まる……。
イーラは、ニーナの前に立ち、
「元勇者の、盾にしかならなかった姉さんが、何時までも、目立って無いでよ……!」
好戦的だ……。
言われたニーナは、ふぅっと息を吐く。
イーラとやらも、悪い子じゃ無いが、言葉が過ぎるな。
俺は、静かに、
「まあ、殺さない程度にな……」
「大丈夫……。けど、腕の一本や二本、折ってしまうかも……」
久々に、ニーナも、本気モードか。
試合の合図と共に、各々が、各々の、因縁の相手と、対峙する。
ニーナはイーラと。
マヤは、ファスナと。
ポメットとラフィーは、俺と対峙する。
俺達に、慢心は無い。
逆に、勇者パーティーは、俺達の実力も測れず、愚かにも、余裕を見せている。
イーラが、詠唱を始める。
しかし……!
「ファイヤーレイン!!」
ニーナは、無詠唱で、上級魔法を放つ!
これが、実力差だ。
玉の様に弾かれ、横たわる、イーラを見て、愕然とする、勇者パーティー。
今度は、マヤが、風の様に駆け出す!
ファスナは、剣を構え、応戦しようとするが……。
「遅い!!」
ファスナの腕から、血風が舞う。
これで戦士も、行動不能。
俺は、悠然と構え、
「ラフィーと言ったか?早く、勇者に、支援魔法を掛けろ!今のままでは、相手に成らぬぞ?」
「くっ!?」
ラフィーは慌て、ポメットに、支援魔法をかける。
俺は、剣を肩に乗せ、
「ほれ!かかって来なさい!」
ポメットが、咆哮を上げ、剣を振るう。
俺は、易々と躱し、
「踏み込みが甘い!」
「はあっ!」
「そんな攻撃で、敵が倒せるか!」
「ま、まだまだぁ!」
俺は、肩に剣を乗せたまま、ポメットの攻撃を躱し、指導を続ける。
ガイアなど、相手に成らないな……。
中々良い、勇者じゃねえか。
俺は、神速の速さで、剣を振るう!
ガキッ!!
ポメットの剣は宙に舞い、俺の剣が、ポメットの喉元に。
「ま、参りました……」
「精進しろよ」
歓声が上がる!
「しょ、勝者、風のメシア!!」
審判の声を聞き、俺達は、剣を収める。
各国の王が、総立ちで、拍手をしている。
だから、目立つのは、好きじゃ無いんだが……。
イーラとファスナは、治療の為に、医務室へと、運ばれた。
俺達は、フィリス三世の前で、跪く。
それに習い、ポメットとラフィーも。
フィリス三世が、各国の王の代表で、
「ポメット達よ。己が実力は、理解出来たか?世界の危機であるが、焦らず、精進せよ!」
「「はっ……」」
ラフィーは、相当、落胆している様だ。
勇者パーティーの、問題と成らなければ良いが……。
一計を、案ずるとしよう。
フィリス三世は、俺達の方を向き、
「ジャショウ達よ!お主等は、正に、万夫不当の豪傑よ!お主等の武勇に価する、褒美を取らそう!何を望む?」
また、褒美ですか?
まあ、既に、決まっているのだが……。
俺は、ニーナとマヤの方を向く。
二人は、俺の顔を見て、小さく頷く。
俺も頷き、
「それでは!」
一同が、俺に注目する。
俺は、ニッコリ笑い、
「戦って分かりましたが……。ポメット達は、正に大器!この混沌とした世界で、多くの魔物を倒し、世界を救うでしょう!その勇者を使わせたのは、至高神、ネガレカ様です!それだと言うのに、ネガレカ様を祀る、総本山であるギーラ教会が、破壊されたままと言うのは、不憫で成りません!どうか、ギーラ教会の復興と、丁度、各国の王が居ますので、然るべき司教を建て、ネガレカ教の教えを、お守り頂きたい!」
観衆が、どよめき立つ。
何時もの事だ……。
特にラフィーは、俺を凝視し、固まっている。
フィリス三世は、大きく頷き、
「確かに、ネガレカ様の救済に、我等は、応えるべきであるな!ジャショウよ!良くぞ、申してくれた!我がエルバートは、再び、ギーラ領への援助を約束し、ネガレカ教の教えを、推奨する!皆様方は、どうなさいますかな?」
「ふむ。オールド帝国も、ジャショウ殿の願いなら、喜んで、お力を貸そう!しかし、昔の様に、腐敗したなら、容赦はせぬぞ!」
「我が、レーザル聖帝国も、それに同意します!」
「為らば、我が国も!」
「ああ、我が国も!」
「うむ!満場一致か!為らば、ジョセフの様な、愚かな神父が出ぬ様に、各国目を光らせ、ギーラ教会の復興を、約束しよう!」
「はっ!よろしくお願いします!」
やれやれ……。
これで、どうにかなるだろう。
ネガレカ殿に、不憫な思いを、させたく無いし、ラフィーの暴走も、落ち着くだろう。
まったく……。
ネガレカ殿には悪いが、世話のやける、子供達だよ……。




