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天翔雲流  作者: NOISE
魔王進軍
1385/1794

勇者降臨

 新たな勇者が決まった……。

 十四歳の、栗色の髪の、小柄な少女。

 しかし、厄介な事に、

「師匠ぉ!!」

 俺を師と呼び、ダイブする。

 俺は、それを、華麗に躱し、

「今日は、何の用だ……?」

「師匠!師匠!師匠!師匠♪」

「お前……。言葉が喋れぬ、訳では無いだろう?」

 見えない尻尾を振り、俺に抱き着く勇者。

 彼女は、俺の、大ファンらしい。

 どうしてこうなった……?

 遡る事、三日前……。

 勇者候補生……。

 ポメットと言うのだが、厳しい訓練に耐え、仮勇者と成った彼女は、最後の試練を、受ける事と成った。

 神剣の解放……。

 ガイアと違い、彼女は、仲間と共に、最下層まで行き、神剣に認められた……。

 漸く、この世界に、勇者が降臨したのだ。

 そこまでは、良かった……。

 実力も、そこそこある。

 四天王は、まだ、倒せないが、七将辺りであれば、倒す事が出来るだろう。

 フィリス三世達も、満足している。

 しばらくの間は、諸国を旅して、実力を付けると言う事で、話はまとまった。

 俺も、その会議に、出席していたから、具体的な内容を、聞かされている。

 漸く、人々にも、希望が見えたと言う事だ。

 その間、同じく出席していた、ポメットは、羨望の眼差しで、俺を見ていた事は、良く知っている。

 徹底的に、無視をしたが……。

 会議が終わると、ポメットは、俺に駆け寄って、

「ジャショウ様!ジャショウ様♪サイン下さい!」

「は?」

 勇者が、冒険者の、サインが欲しいだと?

 頭に、ウジでも湧いているのか?

 俺は、それを、やんわり断り、帰路につく。

 しかし!付いて来る。

 トイレに逃げ込もうと、付いて来る。

 まるで、子犬の様だ。

 これに焦ったのは、ネガレカ教僧侶、ラフィーだ。

 悪い奴じゃ無いのだが、ネガレカの教えに、命を賭けている。

 何としても、勇者に、魔王を倒させ、人々に敬遠される様に成った、ネガレカ教再興を、夢見ているのだ。

 その為の勇者が、一冒険者に、懐いている事は、由々しき事態だ。

 一計を案じ、

「フィリス三世国王陛下!我等の力は、まだまだ未熟です!四天王を倒したと言う、風のメシアの皆様の、胸を貸して頂けないでしょうか?」

「ふむ?御前試合か……。しかし、ジャショウ達に敗れても、落胆するでないぞ?」

「はっ!」

 ラフィーは、ポメットや仲間達の力に、絶対の自信を持っていた。

 俺達を倒し、伝説を、塗り替えようと言うのだ。

 少し、焦り過ぎの様に思えるが、致し方なき事。

 それだけ、追い詰められているのだ。

 ギーラ領とは、ネガレカ信者にとって、聖地に価する。

 しかし、今は、見る影も無い。

 ラフィーは、熱狂的な信者として、それが、許せぬのだ。

 故に、勇者パーティーに志願した。

 勇者を補佐する事で、今一度、ギーラ教会の、威光を取り戻そうと言うのだ。

 少しでも早く、結果を出したい。

 されど、ガイアの失敗により、エルバートを始め、諸国は、慎重的な構えを取っている。

 直ぐに、勇者を、前線に投入せず、エルバートで、力を蓄え、各国で、猛威を振るう、魔物達を倒させる。

 四天王退治は、その後だ。

 何度も言う、故に、ラフィーは、焦っていたのだ。

 俺達を倒す事で、四天王に、対抗出来る事を証明し、華々しい武功を挙げ、その恩賞で、ギーラ領の復興を、考えているのだろう。

 そんな、目論みがあるにも関わらず、御前試合は、すんなり、了承された。

 まあ、勇者パーティーと、俺達のパーティーは、浅からぬ因縁が有るからな……。

 勇者ポメットは、俺の大ファン。

 賢者イーラは、ニーナの異母姉妹。

 戦士ファスナは、マヤの父に恋をしている。

 各々が、俺のパーティーに、実力を見せつけたがっているのだ。

 特に、賢者イーラは、ニーナを、意識し過ぎている。

 各々が、各々の思惑の中、御前試合が開かれる……。

 まあ、どれ程の実力が有るか、見ものだなぁ……。


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