甘い夢……。
あの馬鹿は、どうにかならないのか?
謁見の間から聞こえる、喚き声。
俺は、ニーナとマヤと、ため息をつく。
昨日の事で、ガイアは、イシュタナに、お叱りを受けた様だ。
それで、逆ギレ。
アイツ、大丈夫かぁ?
一国の王に、暴言の数々……。
イシュタナは、必死に、ガイアを育てようとしたのに……。
他の国に、見限られていると言うのに。
都合よく、自分を利用しただの。
脅威が去って、自分を捨てるだのと、のたまっておる。
阿呆か?
イシュタナは、遂にはキレて、昨日以上の、怒鳴り声が、響き渡る。
ガイアの声は、どんどん小さく成り、遂には、聞こえなくなる。
逆に、イシュタナの罵声は、何時までも止まない。
温厚な人がキレると、怖いんだよなぁ。
謁見の間からは、
「お望み通り、捨ててやる!何処へなりとも、消えるが良い!!」
ニーナがボソッと、
「ガイア、終了……」
ですよねぇ……。
ガイアの、弱弱しい反論が、二言三言。
だが、イシュタナの怒りの前には、何の意味もなさない。
騎士によって、謁見の間から、ガイアが、引きずり出される。
次は、何処へ行くのやら?
ガイアは、泣き腫らした目で、神剣だけは、離すまいと、必死に抱きしめている。
彼の、唯一の、アイデンティティーだがらなぁ。
勇者なんて、一見、勝ち組だが、死と隣り合わせの、生贄の様なモノだ……。
ガイアは、甘い夢を、見過ぎた。
ここが、踏ん張り時だ。
謙虚に成って、武功を積むか。
はたまた、神剣を返上し、勇者と言う責務から逃げるのか。
もう、誰も、文句は言わない筈だ。
奴に、勇者と言う責務は、荷が重すぎる。
その荷を抱えたまま、どん底まで、堕ちるつもりか?
今なら、まだ、間に合う。
全てを、ギーラ教会の咎とし、被害者に、成る事も出来る。
ガイアよ……。
早く、その甘い夢から、目を覚ませ。
でなけりゃ、本当に、地獄に堕ちる事と成るぞ……?




