最高の咬ませ犬……?
胃の縮む様な、楽しいお茶会は終わり、騎士に連れられ、城を後にする。
しかし、その途中……。
「おい!お前は、魔法使いか?」
また、面倒臭そうなのが、現れた。
白銀の髪の美少年……。
フィナの、弟か何かか?
騎士は、驚き、
「こ、これは、ひ……」
「あ?」
何か言いかけた、騎士を威嚇する。
少年は、俺を値踏みする様に見て、
「魔法使いか?」
また、問いただす。
俺は、苦笑を浮かべ、
「別に……。何と言えば良いかなぁ?冒険者の卵ですよ」
「冒険者の卵ぉ?」
あからさまに、胡散臭そうに見ている。
参ったなぁ……。
帰りたい……。
また、ジロジロ見て、
「冒険者なら、剣が使えるな!僕と勝負しろ!」
「勝負って……。俺はただの……」
「いいから、勝負しろ!!」
木剣を、無理やり押し付ける。
オロオロとする騎士達……。
勘弁してくれぇ……。
少年は、有無も言わさず、斬りかかって来る!
俺は、それを、軽く躱し、
「力み過ぎだ!もう少し、肩の力を抜きなさい!」
「このお!!」
「腕だけで、剣を振るうんじゃ無い!」
「これなら!!」
最初は、嫌々だったが……。
中々、面白い子じゃ無いか。
俺は、一歩も動かず、全ての剣を受け流す。
恐らく、王族だから、怪我させる訳にはいかないか……。
少年の、渾身の突きを、剣で弾いて、これにて終了。
俺は、少年の頭に、手を乗せて、
「強く成れよ……」
はぁ……。
面倒事は、勘弁、勘弁……。
さっさと、退散しよう……。
次の日……。
また、城に呼ばれた……。
まずったなぁ……。
昨日の、少年との立ち合いが、問題に成ったのかもしれない。
ストレスで、胃が、キリキリする。
謁見の間に通され、
「ジャショウよ、待っていたぞ!」
「はあ……。本日は、どの様なご用件で?」
フィリス三世の横には、フィナと、案の定、昨日の少年が、立っていた。
怪我させなかったが、お叱りか?
フィリス三世は、少年の方を向き、
「この者は、カミーユと言う」
カミーユ?
女みたいな、名前をしやがって……。
とか言ったら、最高の、噛ませ犬に、成ってしまう。
フィリス三世は、ため息をつき、
「フィナの妹なんじゃがなぁ……。どう、教育を間違ったか、男の様な真似をする」
本当の、女かよ。
カミーユは、頬を膨らます。
「僕は、騎士に憧れているんだ!僕の事なんだから、どうしようと勝手でしょう?」
「カミーユ!」
フィリス三世には珍しく、声を荒げる。
カミーユは、真っ赤な顔で、
「五月蠅い!五月蠅い!!」
ああ……。
走って行っちゃたよ……。
俺は、嘆息を漏らし、
「国王陛下……。この様な時に、大変失礼ですが……。褒美を頂けないでしょうか?」
「ぬ?別に構わぬが……。どうした?ジャショウよ」
「はっ!カミーユ様とも、お友達に、させて頂きたく……」
「カミーユの友に……?」
どっかの、お姫様を、思い出しちまうんだよなぁ……。
まあ、あっちは、女としての自覚が、ちゃんと有ったが……。
フィリス三世は、目を細め、
「そちには、世話をかけるのう……」
「いえ……。私には、友と呼べる者が、少ないですから……。王族を、友と呼ぶなど、不敬に価しますが……」
「良い!一人の親として頼む!あの子の、良き理解者に成ってくれ!」
「畏まりました……」
さてと……。
カミーユを、探しに行くか……。




