今は、一歩ずつ……!
「失礼します……。ジャショウ君は、居りますか?」
「ヤッホー♪ジャショウ居る?」
俺が、子供達と遊んでいると、キズナとノエナが、やって来た。
トリナは、二人を見ると、深々と頭を下げ、
「もしかして、ジャショウ君を、仲間に入れて下さった方達ですか?家のジャショウが、お世話に成っております」
「あっ!いえいえ!どちらかと言うと、私達の方が、お世話に成っていますから!」
「そうそう♪気は利くし、料理も美味。その上、戦闘まで出来ちゃう!ジャショウは、完璧超人だよねぇ♪」
キズナ達は、俺を褒め、クスクス笑う。
ノエナは、大袋を取り出し、
「お菓子を買って来たから、皆で食べてぇ♪その代わり、ジャショウを借りるよぉ」
「へ?」
子供達は、大喜びで、袋に群がる。
キズナとノエナは、俺と腕を組み。
「そんな訳だから、お姉ちゃん達と、デートをしましょう♪」
「デ、デート?俺は、お金なんて、持っていませんよ?」
「分かってる、分かってる♪全部、孤児院に、寄付しちゃったのでしょう?あたし達が、奢るからさぁ♪」
「モグさんが、報酬を、満足した額、渡す事が出来ないから、現物支給しようって♪」
「げ、現物支給ですか?」
「ジャショウ君、洋服持って無いでしょう?お姉ちゃん達が、選んであげます♪」
「ジャショウは、もっと、お洒落をしようよぉ♪」
「は、はあ……」
別に、服なんて、着られれば良いのだが。
俺は、キズナとノエナに、引きずられる様に、クルセット教会を、後にする。
有難んだが、どうしたものか……。
「ジャショウ君は、どんな服が良いですか?」
「服ですか?着られれば何でも……」
「駄目駄目!遠慮しない!何色が良いのさぁ?」
「色ですか?余り、派手派手しい色は、好きでは無いので、闇夜に紛れる黒が良いですね」
「黒かぁ。シックな色が、良いのですね?ジャショウ君の髪と一緒で、似合いそうですね♪」
「下着、ズボンを、三着。上着は、二着ぐらいで良いかなぁ?後、外套を買おうか?」
「えっ?そんなに、買って頂かなくても……」
「ジャショウ君は、遠慮しない!」
「は、はい!」
どうも、女性には弱いなぁ、俺。
半ば、引きずられる様に、服屋に連れて行かれ、ファッションショーが始まる。
キズナとノエナは、鼻を押さえ、
「ヤバ!包帯していても、呪いが凄い」
「ジャショウ君は、女泣かせですねぇ」
ぬ?
呪い?
キズナとノエナは、何でも無いと、ニコニコ笑う。
結局、ブーツまで、買ってもらった。
本当に、良いのだろうか?
う~む……。
中古だが、結構、上等な物を、買ってもらってしまった。
その後は、キズナ達の買い物に付き合い、打ち上げをするので、白狼亭へと向かった。
白狼亭に入れば、
「おう!ジャショウ♪待っていたぞ!」
「おうおう!男前に成って!良い服、買ってもらったなぁ」
「あ、あの……。ありがとうございます!」
今日の白狼亭は、お祭り騒ぎ。
主人公は、グレイアックスだ。
飲めや歌えの、どんちゃん騒ぎ。
厨房は、てんてこ舞いだ。
俺は、女将さんの処へ行き、
「あ、あの……。厨房の手伝いを、させて頂けないでしょうか?」
「あんたがかい?」
女将さんは、驚いた表情で、俺の顔色を窺う。
俺は、頭を下げ、
「あの!野菜の皮むきでも、皿洗いでも良いんです!グレイアックスの皆に、美味しい料理を食べさせたいんです!勉強させて下さい!」
この世界の料理は、余り知らないからな。
何とか、料理を学ばなくては。
俺の、存在意義に関わる!
女将さんは、満面の笑みに変わり、
「あんた、良い子だねぇ……。きっと、家の旦那も、喜ぶよ!さあ、厨房に入り!」
「ありがとうございます!」
厨房では、厳ついおっさんが、料理をしていた。
ここのギルドマスター兼コック。
ガイスさんだ。
俺を、横目で見、
「手伝いたいんだってなぁ」
「はい!」
「ふん!分かった……。取り敢えず、食器を洗ってくれ!」
「はい!頑張ります!」
俺は、手際良く、食器を洗ってゆく。
元の世界で、散々やって来たから、こう言う事は、大得意だ。
一通り、食器を洗い終えると、
「そこに有る野菜を、洗って皮を剥け」
「はい!」
へぇ……。
世界は変われど、野菜は、変わらないんだなぁ。
ジャガイモ、人参、玉ねぎ、キャベツ。
世界が変わっても、人間の見た目も、ほとんど変わらないからなぁ。
これが、理と言うモノなのだろう。
俺は、手際良く、野菜を洗い、皮を剥く。
ガイスは、ぼそっと、
「やるな……」
褒めてくれたのか?
直ぐに、そっぽを向いてしまった。
「野菜の皮を剥いたなら、大鍋のスープの、灰汁取りをしてみろ……」
「はい!」
成る程な……。
基本料理も、余り、変わらない様だ。
食材が、似ているのだから、当たり前か。
俺は、ガイスさんの指示に従い、テキパキと、仕事をこなす。
夜が更け、それでも祭りは、終わりそうも無いな……。




