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天翔雲流  作者: NOISE
神々の願い
1324/1794

第一歩

「おい!手前、面を貸せ!」

 年長の少年か……。

 朝から、面倒臭いな……。

 俺を守る様に、小さな子供達が、少年を睨む。

 少年は、苛立ち気味に、

「ガキ共は、すっこんでろ!!」

 怒鳴り散らす。

 俺は、ウンザリした顔で、

「おい……。小さな子達に、当たるんじゃねえ……。で、何の用だよ?」

「テメエ!!」

 少年の拳が、俺の頬に当たる!

 やれやれ、手を上げたか……。

 しかし、俺は、微動だにせず、

「気が済んだかよ?」

「テメエ……!出て行けよ!さっさと、出て行けよ!!」

 出て行きたいのは、山々なんだが……。

 やれやれ……。

 他の子達が、トリナを呼んで来てしまった様だ。

 トリナは、静かに怒り、

「ガイア君!貴方、何をやっているのですか!」

「ト、トリナシスター……。俺は、この孤児院を思って!」

「暴力を振るう、理由に成っていません!親の無い子を捨てる事が、正しい事だと、思っているのですか?」

「畜生……。畜生!畜生!畜生!!こんな、貧乏孤児院に、これ以上、子供を養う力なんて、有る訳無いだろうが!!シスターこそ、現実を見ろよ!!」

「それでも私は、誰一人、見捨てません!!」

「糞、糞!糞ぉ!!」

 少年は、走り去って行ってしまった。

 彼の言う事の方が、正しい……。

 理想だけでは、腹は膨れぬ。

 さてと……。

 どうにかしなくてはな……。



 俺は、冒険者と成るべく、白狼亭へと向かった。

 白狼亭の冒険者パーティー……。

 グレイアックスと言う者達が、雑用を探しているらしい。

 クルセット教会から、近い所に、白狼亭は在る。

 トリナは、引き留めてくれたが、今の現状、誰かが、金を稼ぐ必要が有る。

 俺は、白狼亭の扉を開け、冒険者達を、見回す。

 成る程な……。

 ピンからキリと、言った処だが、それなりの猛者が、居る様だ。

 冒険者達は、俺を値踏みする様に見ている。

 そこに、ふくよかな女性が、俺を驚かせまいと、優しい笑顔で、目線を合わせる。

「お嬢ちゃん、誰か探しているのかい?」

「お嬢ちゃん……?俺は、男なんだが……」

「あれまぁ!顔が、包帯で隠れているから、おばちゃん、間違えちゃったよ!」

「「「がははは!!」」」

 失礼な奴等だ……。

 だが、もう、慣れている。

 俺は、ため息をつき、

「門番のアミューさんから、このギルドの、グレイアックスって言うパーティーが、雑用を募集しているって聞いて……。紹介状も、持って来ました」

 そう言い、手紙を、女性に渡す。

「おやまぁ、アミューちゃんからの、紹介かい?モグ!あんたに可愛いお客さんだよ!」

「おう!」

 巨大なアックスを背負った、筋骨隆々の男が、俺の下に現る。

 悪い匂いはしない。

 俺は、モグと呼ばれた男を、真っ直ぐ見詰め、

「これが、アミューさんからの手紙です」

「愚妹の紹介か……」

 モグは、俺から手紙を受け取り、目を通す。

 一通り読み終え、モグは、俺を、まじまじと見る。

「お前、冒険者に成りたいのか?」

「はい」

「けど、お前の歳じゃ、まだ成れない」

「はい。だから、雑用として、雇って下さい」

「ふ~む……。お前、かなり強いだろう?何度も、死線を潜り抜けて来た、男の目だ!」

「身を守る術なら、知っているつもりです」

「それでも、今出来る事は、雑用だぞ?分かっているな?」

「はい」

 そこまで言って、モグは、ふぅっと、息を吐く。

「坊主……。ジャショウと言ったな?取り敢えず、俺の仲間を紹介する!そして、一か月様子を見て、お前を仲間にするか決める!それで良いな?」

「ありがとうございます!」

 何とかなりそうだ……。

 俺は、深々と、頭を下げる。

 その頭に、大きな手が乗り、

「そう、緊張するな!皆、良い奴だからな!」

「はい!」

 これで、漸く、第一歩が踏み出せる。

 中々、難儀なモノだ……。

 ちゃっちゃと、魔王を倒せば、楽なんだがなぁ……。

 今回は、縛りが多くて、面倒臭そうだ……。


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