先ずは、第一歩
また、この感覚か……。
俺は、草原の中で、むっくりと立ち上がる。
記憶は、ちゃんとあるな……。
遥か遠方にある街が、エネッサだろう。
ふと横を見ると、リュックが一つ。
俺は、首を傾げる。
丁度そこで、
『ジャショウ殿!』
「ん?この声は、ネガレカ殿か?」
『はい。今後私が、サポートします!それで、そのリュックは、初期装備と成ります!流石に、布の服だけでは、心許ないですからね。ナイフ、火打石、食器、ランタンが、入っております。それと、少ないですが、三百ルーベ……。ルーベとは、この世界の、通貨単位です。成人男性で、一日、百ルーベ位、使うと思って良いでしょう。何かの足しにして下さい』
「済まない……。流石に、布の服一枚で、街に入ろうとしても、怪しまれると、思っていた処だ」
『ええ、私も、そう思っていた処です。ただ、魔王の侵攻により、エネッサの街に逃げて来る者も、多く存在します。恐らく、簡単に、入る事が、出来る筈です』
「分かった……。取り敢えず、エネッサの街に、向かうとしよう」
やれやれ……。
やる事が、山角だ。
先ずは、拠点を、どうにかしなくてはな……。
エネッサの街……。
「止まれ!」
はい、お約束……。
門番の登場か……。
俺は素直に、門番の前で止まる。
荷物を預け、
「不審なモノは、持っていないな。君、名前は?」
「ジャショウ……」
「親は?」
「残念だけど、俺に、親はいない」
「そうか……。済まぬ事を聞いた」
「いや、気にして無いから、大丈夫だ」
中々、優しい、門番の様だ。
俺に、親が居ないと聞き、親身に成って、話しかけてくる。
「この街に何故?」
「ん?ああ、冒険者に成りたくて……。ここら辺の敵は、弱いと聞いて……」
「そうか……。ジャショウ君、残念だけど、正式な冒険者に成るには、年齢が足りない。冒険者は、十四歳から成れる」
「参ったな……」
「けど、大丈夫だ!冒険者の、荷物持ちや雑用なら、下働きと言う形で、君の歳でも、何とか成れる筈さ」
「本当ですか?ありがとうございます」
雑用か……。
まあ、派手に暴れるより、丁度良いかも知れない。
俺は、門番にお礼を言い、街の中へと、入ろうとする。
しかし、
「ジャショウ君!冒険者と言っても、ピンからキリだ。下働きの子を、囮に使ったり。余り、口では言えない事をする者もいる!まあ、何かの縁だ。丁度、知り合いで、下働きの子を、探しているパーティーが居る。君さえ良かったら、紹介状を書こう」
「は、はあ……。良いのですか?」
何か、話が上手すぎるぞ?
何かあるのか?
流石に、警戒する。
しかし、
『ジャショウ殿!その者の言は、嘘偽り有りません!その者には、今のジャショウ君と、同じ位の弟が、居た様だ』
『居た様だ?』
『うむ。魔物に、殺されておるよ……。ジャショウ殿に、面影を重ねたのだろう』
『そう言う事か……』
俺は、門番の方を向く。
善意であるなら、多分、問題無い筈……。
まあ、何かあったら、潰せば良いか。
俺は、ニッコリ笑い、
「ありがとうございます!お姉ちゃん♪」
言っていて恥ずかしいが、門番は、真っ赤な顔をする。
門番が、男だなんて、誰が言った?
重装備で、身を固めているが、紛れも無い女性だ。
門番は、真っ赤な顔に成り、
「う、うむ!お姉ちゃんに、任せておきなさい!」
「はい♪」
まあ、なんにせよ、どうにかなるだろう。
さてと……。
この世界の冒険者は、どれ程のモノかなぁ……?




