カーラ王朝の英知
「馬鹿犬!深き眠りのダンジョン、攻略するわよ!」
元気の良い、王女様だ……。
俺達は、アイカを先陣に、深い眠りのダンジョンを、攻略する事とする。
アイカ達のレベルが、大幅に、上がっているな。
危なげなく、五階層まで、到達する。
ゴブリンから始まり、オーガも倒す。
他の生徒達は、呆然としている。
アルテイシアは、満足げに頷く。
俺は、アイカの肩を叩き、
「ここから先は、俺が、先頭を歩く。アイカ達は、他の生徒と一緒に、良く見ておくように」
「は、はい!」
このダンジョンも、九階層……。
面白い事に、カーラ王朝の、遺跡を取り込んでいる。
イヴが、得意げに、ナビゲートしてくれる。
ドラゴンや、アークデーモンを倒し、最下層に……。
まあ、楽勝だな……。
あらかた、宝箱も漁り尽くし、最層部へ。
異質の気を感じる。
ダンジョンマスターか……。
俺は、アルテイシアや、アイカ達を下がらせ、静かに、気を開放してゆく。
一匹の、三頭の龍!
咆哮を上げ、俺に、襲い掛かる!
今更ですやん。
俺は、二つの首を斬り落とし、最後の頭を、拳で叩き潰す!
沈黙……!
今更ですやん。
魔晶石を拾い、アルテイシアに投げる。
「ほらよ!これで、深き眠りのダンジョン、完全攻略だ♪」
「相変わらず、化け物ねぇ……」
酷い、言い草だ……。
しかし、アルテイシアは、首を傾げ、
「ちょっと待って!後ろに、まだ、扉がある様よ?」
「扉……?」
俺は、アルテイシアの、指さす方を、確認する。
カーラ王朝の文字……。
そして、確かに、扉らしきものがある。
文字の方は、
『神に捧げし、カーラ王朝の英知……』
何の事だ?
危険なモノなら、破壊するべきか?
俺は静かに、扉に触れる。
ダンジョン自体が、光り輝き、カーラ王朝の文明が、命を取り戻す。
何がある?
扉が開き、
『あ、あの……。良く、お出で下さいました。我が主よ……』
気の弱そうな、少女の声……。
何か、デジャヴュを感じる。
そこには、一本の剣が、宙に浮いていた。
貴族の一人が、俺を押しのけ、
「どけ!何であるか分からぬが、これぞ正に、神の聖剣!アルテイシア様が、持つに相応しい!」
剣を取ろうと、部屋へと入る。
しかし、
『い、いや!主様以外は、ここに来ないで下さい!!』
部屋中から、無数の光線が放たれ、
「ぐふっ!?」
貴族の体に、無数の風穴が開き、血反吐を吐いて倒れる。
何やってんだ?コイツ……。
アルテイシアは、動じず、
「馬鹿犬!その子は、貴方をご所望よ!取って来なさい!」
「へいへい……」
俺は、警戒しながら、部屋へと入る。
少女の、嬉しそうな声が、響き渡る。
『主様♪主様♪』
その声を聞き、イヴが、
『あなた、リース?』
『その声は、お母様ですか!?』
イヴに、リースと呼ばれる声が、同調する。
俺は、首を傾げ、
「イヴ、知っているのか?」
『はい。戦闘型AIリース。神に捧げられし、戦闘特化AIです』
「戦闘型AI?」
部屋が光り輝き、俺の中に、膨大な知識が流れ込んで来る。
カーラ王朝の、武器知識……。
ふむ、銃と言うモノも、有ったのか……。
少女は、無邪気に笑い、
『さあ、私を、手に取って下さい♪』
俺は、静かに、剣を握る。
剣は、光り輝き、俺の内に。
『戦闘型AIリース♪インストールされました♪これより、戦闘指揮の、援護を行いたいと思います!』
俺の頭の中で、イヴとリースが、談笑を始める。
俺は、苦笑し、
「リースは、何が出来るんだい?」
まあ、何も出来なくて、良いんだが……。
リースは、得意げに、
『私の知識を基に、主様の魔力を使い、あらゆる武器を、作成できます♪主様の愛刀の力を使えば、神具も作成可能です♪』
「ああ、黒鋼か……」
まあ、簡単な話、俺の頭の中が、賑やかに成ったと言う訳か。
俺は苦笑し、部屋から出る。
アルテイシアは、首を傾げ、
「剣は、どうなったのよ?」
「んあ?あれ自体には、意味が無いらしい。イヴと一緒で、俺のサポートをしてくれる、人工知能らしい。リース!取り敢えず、挨拶してくれ」
『は、はい!私は、戦闘型AIリース!あらゆる武器の知識を持ち、戦闘を熟知しています。それらを基に、敵の、行動パターンを、瞬時に計算します♪その……。戦闘の事なら、お任せください♪』
「だ、そうだ」
「ふ~ん……。リースちゃんは、物と言うより、人格と言う事ね?それじゃあ、献上しろとは、言う事が出来ないわね♪私は、アルテイシア。シアって呼んで良いわ♪よろしくね?リースちゃん♪」
『畏まりました。シア様……。インプットさせてもらいます』
やれやれ……。
また、しばらく、賑やかに成りそうだ……。




