ナチュラルチートなんて、流行らないぞ?
前途多難な走りだしに、多少の不安は覚えるが、まあ、どうにかなるかと思い、頭を掻きながらため息をつく。
『で、これからどうするの?』
『うん。まずは、スキルの確認ね♪』
ナビ子に言われ、ステータス画面を見る。
主だったスキルの中で、解らないものを、聞いていく事にする。
一部、異世界転生のススメに出てくるものもある。
『大丈夫、大丈夫。言わなくても解るから』
そう言うと、ステータス画面を指しているカーソルが、スキルを指していく。
カーソルに指されたスキルの下に、新しいウィンドウ画面が開かれる。
特殊スキル
言語理解
レベル分の、言語を習得できる。
千里眼
レベル×1kの距離を見通す事が出来る。
洞察力
レベル相当のスキルを見る事で、理解し、習得する事が出来る。
気配察知
レベル×100mの範囲の、生命の気配を察知する事が出来る。(自動発動)
武術の心得
レベル×二分の一の数値が、戦闘系スキルに加算される。
限界突破
レベル分の倍数、能力が限界値になる。
(基本能力値限界1000)
念話
時空を超えたところに居る者。また、種族を超えて、言語の違う者と、テレパシーで会話する事が出来る。
『戦闘スキルと一般スキルは、省略するね』
固有スキル
鬼神
レベル×10分の間、能力値が倍加する。
魔法の耐性
レベル分の割合、魔法の効果を減少させる。
毒の耐性
レベル分の威力の毒を、無効にする。
自然治癒
レベル分の自然回復量を、倍増させる。
(基本一日の回復量、HPの1%)
錬気スキル
剛気
身体能力を高める、錬気術
創気
気で、刃やシールドを創る事が出来る。
放気
気の塊を、放出する事が出来る。
加護
世界神の寵愛
全ての能力が、1・5倍になる。
エステカのナビが加わる。
武神の加護
武術系スキル、錬気系スキルの、レベル上昇率が、1・5倍になる。
時巡りの使者
時空を超えて来た者がもらう称号
能力値上昇率が1・5倍になる
『まあ、こんな所ね……。解らない事ある?』
『うん……。チートだったねこれ……』
『そうね。ジャショウちゃん、ナチュラルチートって言う所ね♪』
能力値を再度確認し、苦笑する。
すでにいくつかの能力は、1000を超えていて、さらにこれに、固有スキルや加護の能力を加えれば、数値以上の力を発揮することになる。
先ほど、拳を振るうだけで、衝撃波が放たれたことを思い浮かべ、苦笑する。
『うん、解った……。で、MPと錬気って何?』
異世界転生のススメの知識で、MPがなんであるかは、何と無く理解している。が、実際どういったものなのか解らない。
『えっとねぇ……。実際、やってみた方が早いか』
ナビ子がそう言うと、ステータス画面が消え、視界が広がる。
『まず、オーソドックスなやつね。半歩足を広げ、丹田に意識を集中して』
言われるがまま、丹田に、意識を集中する。
自然と目を閉じ、深く深呼吸を繰り返す。
全身の血流を感じる事が出来る。
体内に、血流とは別に、ひと際大きい、銀色の粒子の流れと、金色の粒子の流れを感じる事が出来た。
『これって……』
『そう。落ち着いて感じてみて……。銀色の流れは、錬気。金色の流れは、魔力の流れよ……』
銀色の流れが、金色の流れを飲み込もうとしている。
先ほど感じた、体の奥底から湧き出る力の源……。
全身を覆う様に、広がってくる。
『ジャショウちゃん、無意識に、剛気を、使いこなしているね……』
『これが、錬気……。これが剛気?』
不思議な感覚に、集中していた意識が、乱れてしまう。
『あっ……』
不思議な高揚感が無くなり、吐息が漏れる。
『今のが、剛気。剛気には、身体能力を上げるだけじゃなくて、身体を鋼の様に固くしたり、羽毛の様に軽くしたり出来るようになるわ』
『それって、どうやるの?』
自分の可能性に胸躍り、ナビ子に聞いてみる。
うん。過去の事はともかく、今の自分を知らないとね。
『う~ん。それは、自分で見出すか、その手の指導者に教えを乞う事ね。私が教えられるのは、初歩的な事』
『そっか……。まあ、何でも直ぐに出来ちゃったら、つまらないしな』
心が、高揚する。まるで、新しい玩具を貰った子供の様に、目を輝かせ笑顔をこぼす。
『ふふ。そうね。冒険は始まったばかりだもの……』
『ああ』
『次は、創気ね♪まずは初歩。さっきの要領で、手の先に、刃をイメージしてみて』
言われるままに、流れる気を、手へと移していく。
指先から、光の粒子が、流れ出ていく。
最初は、不安定に揺らめいていたが、イメージを固め、手刀に刀を模す様に、気を這わせる。すると、青紫色の刃が手の先に生まれた。
「おお!」
生まれた刃で、近くの木を斬ってみる。
木は横一線に斬られ、音も無く倒れた。
『すごい、すごい♪ジャショウちゃん、初めてなのに、どんどん出来る様になるね』
『なあ、次は?』
『そう慌てないで。最後は、放気!これは、そのままの意味ね。手を正面にかざして、手の平に、錬気を溜めて』
片手を前に突き出し、気を這わせる。
気が、手の平に集まり、輝き始める。
『そう。そのまま……。一気に、放つ』
ナビ子の合図に合わせて、手の中に溜めたものを手放すようなイメージで、気を放つ。
ドド~ン
気は、眼前にそびえ立つ木々を飲み込み、眩い光が広がる。
次の瞬間!前方に有った木々は消え去り、地面はえぐれ、辺り一面、更地と化す。
「なっ!?」
あまりの事に、絶句する。
『あちゃ~。ジャショウちゃんの力じゃ、そうなっちゃうよね……』
『俺は、加減したぞ……』
あまりの事態に、テンパりながら、弁明する。
『ジャショウちゃん。個体エネルギーが、異常に高いから……』
非難されている様で、変な汗が流れてくる。
『でも、大丈夫♪放気は、ある程度、操る事が出来るから♪』
『その方法は……』
『熟練者に聞いて♪』
『ですよね~』
少し消沈して、両手を見る。
「う~ん……」
「錬気 集束破!な~んてな」
指先に意識を集中して、気を放つ。
今度は、線光となって、木の幹を貫通する。木には、10㎝程の穴が開き、煙が漂う。
『おお~。ジャショウちゃんやるぅ♪』
『うむ。コツをつかんだ……』
満足そうな笑みを浮かべ、踏ん反り返る。
しかし、収束破は、無いな。うん。安直なネーミング……。
ナビ子には、突っ込んで欲しかった……。
そんな俺の心を知ってか知らずか、何事も無かった様に説明を続けるナビ子。
『錬気には、陰と陽があって、陽の気で放気を放てば、傷を癒す事が出来るわ♪』
『陰と陽?』
『そ。陰と陽。ジャショウちゃんは、魔法効きづらいから、早く、コントロール出来る様にならないとね♪』
ウインクする少女の顔が、ちらつく。
脳裏のチラつく、少女の笑みにつられ、俺も、笑みが零れていた。




