謁見……。
午前八時五十分……。
応接室で、くつろいでいた俺達の前に、青い外套を身の纏った騎士が現れる。
「ジャショウ以下!これより、国王陛下との謁見を行う!」
ようやくか……。
ここに来てから、一時間以上待たされた。
口の周りいっぱいに、クッキーの食べかすを付けた、サクヤの顔を拭いてやる。
「私の後に続き、大広間に来られたし!」
俺は、サクヤの手を取り、男の後ろに続く。
キリカはシャルに任せて、と……。
爺さんは、マイペースだ。
大広間の扉が開かれる。
白銀の鎧を身に纏い、その上から、青い外套を羽織った騎士が、ずらっと並んでいる。
なかなか、精悍なものだ。
国王は……。
まだ、来ていない様だ。
辺りを見渡す。
色とりどりのステンドガラス。
大理石の柱……。
圧巻だ……。
俺達は、片膝を立て、首を垂れる様言われ、その場で、中腰になる。
右手は、胸に……。
サクヤも、俺に倣って、首を垂れている。
緊張?
あんまり、しないな……。
それより早く、この茶番を終わらせたい。
どれほど待っただろう……?
先ほど、案内してくれた男が、号令を掛ける。
周りの騎士は、剣先を上に、胸元に押し当てて、直立不動の構えをとる。
軽快なラッパ音。
見事な刺繍の施された、ビロードのマントを羽織った男が、玉座に座る。
静寂……。
「かの者達が、魔獣を倒した者か?」
重厚で、それでいて威圧感の無い暖かな声が響き渡る。
威圧感が無い?
いや……。
ここからでも感じられる。
なかなかの、猛者だ!
「そこもと、名は?」
俺達に、向けられた声。
「ジャショウ・シルフィール」
「シャルロット・シルフィール」
「サクヤ・シルフィール」
俺達は、顔を上げ、答える。
この人が、国王……。
歳は、ギルムと同じぐらいか……。
厚手の服からも分かる、筋肉。
柔和な眼光。
なかなかの、人格者の様だ……。
「ふむ。良い目をしている……。そこもと達、同じ姓を名乗っているが……」
「血も種も違えど、我等三兄妹……。共に手を取り、生きる者です」
「そうか……」
玉座に座る男は、優しく頷く。
やはり、この世界は面白い。
俺は、言い様の無い高揚感を覚える。
強者を前にした時とは、また別の……。
「そこもと達が、魔獣・ギルバードを倒したいきさつは……」
「成り行きで……」
「成り行き?」
「森の奥で……。瘴気の巣を探していた時に、対峙しました……」
「瘴気の巣を?何故じゃ?」
「可能性を模索するため……。浄化の技を身に着ける為に……」
王は、深く息を吐く……。
重く、重厚な時間が流れる。
「ジャショウよ。その方、勇者を目指しているのか?」
「いいえ。冒険者です」
「冒険者……?」
「世界を周り、美味い物を食べ、強い者を知る……。そして、三人で、苦楽を共にする」
沈黙……。
しかし、
「くく、ハハハ!聞いたか、ギルム?何とも頼もしき子供達じゃ!」
国王が笑った!?
て言うか、何でそこで、ギルム?
「国王よ……。戯れが過ぎるぞ?」
後ろを振り向くと、ギルムは立ち上がり、頭をかいていた……。
「なんじゃ?畏まって……。昔の様に、ヨルムと呼んでも良いんじゃぞ?」
「ぬかせ!」
は?
何、知り合い?
俺達が、目を点にして固まっていると……。キリカに関しては、泡を吹いて倒れそう……。
ギルムと国王が、談笑し始める。
「何じゃ?言っておらんのか?拳聖ギルム!」
「その名は、よせい!」
「儂らは昔、冒険者をやっておったのじゃ」
国王が、冒険者!?
「儂も昔は、やんちゃでのう……。城を抜け出して……な」
「主が、王子だったなどと、聞いて居らんかった!」
「しかし、お主ほどの者、国で召し抱え……」
「いらん!宮仕えは、儂の生に合わん!それに……」
一同の目が、キリカに向かう。
「ハニバルの娘か……」
国王は立ち上がり、キリカの前に来る。
「キリカと言ったか?」
「ひ、ひゃい!」
涙目の、キリカ……。
すげえ、震えてる……。
「キリカよ……。そこもとの、父上には悪い事をした……。ただ一人、死地に向かわせてしもうた……」
「父さ・ま……?」
「そこもとの父、ハニバルと、儂、そしてギルムは、共に冒険者をしておったんだよ」
「国王様と父さまが……?」
国王は頷き、キリカを優しく撫でる。
キリカは、感極まって泣いてしまった。
「キリカちゃんを、泣かせちゃあかんよ!」
サクヤが立ち上がる。
俺は慌てて、サクヤをなだめ、いじめている訳じゃ無いと教える。
シャルは、可笑しそうに笑い、キリカは、嬉しそうに泣き笑った。




