TPOをわきまえてもらいたい!
「お飲み物は、いかが致しましょう?」
俺達は今、応接室に居る。
応接室と言っても、かなりデカい……。
天井は高く、煌びやかなシャンデリアが、二つ……。
真っ赤な絨毯に、ふかふかのソファー。
物珍しさからサクヤは、あっちにちょろちょろ、こっちにちょろちょろ……。
俺は、サクヤがぶつかって、何か壊してしまうのではと思い、今現在、サクヤを膝の上に乗せ、抱きしめている。
「ジャショウ……。探検したいんよ!」
「だ~め!良い子で持ってるの」
サクヤは頬を膨らませ、俺に膝の上で、足をばたつかせる。
「あのう……。お飲み物は……」
おっと……。
忘れていた……。
俺は、メイドの方に向き直る。
「あ~。俺は……」
「儂は、エールじゃ!」
横からギルムが、口を挟む……。
エールって……。
「あ、あのう……。エールは……」
さすがに、ある訳が無い。
TPOをわきまえてもらいたい!
「あ~。俺、緑茶」
「緑茶ですか……。たしか東方の……」
メイドが、困っている……。
えっ!?
俺も、TPOをわきまえていない?
「アタイ、アヤの実のジュースが飲みたいんよ♪」
サクヤが、元気良く応える。
メイドは、ほっとした顔で、
「アヤの実ですね。畏まりました」
それに習って、シャルとキリカは、同じものを頼む。
「あ~。お茶って、何がある?」
「お茶ですか……?紅茶なら、ダージリン、アッサム、ニルギリ……。各種取り揃えています」
「あ~。砂糖はいらないんだが……」
「でしたら、ダージリンなど如何でしょう?」
「じゃあ、それで……」
いきなり、種類を言われても、訳が分からん!
紅茶は、紅茶だろう……。
何か場違いの雰囲気に、今更ながら、緊張してきた。
何か、パンダを見に行く気分だったのに。
「ぬう……。酒は何があるのじゃ!」
爺さん、ブレね~~。
「お、お酒ですか……。王様と会われる前に、飲酒はちょっと……」
そりゃ、そうだ。
メイドさん。涙目になっているじゃないか。
ギルムは、まだ納得いかない様子で……。
唸っている……。
見かねた俺は、
「爺さん!」
「分かったわい!坊主と一緒で!」
「か、畏まりました!」
メイドは、一目散に出て行った。
心象、悪~~~。
「ジャショウ。テーブルの甘い匂いのするやつ。食べてええの?」
サクヤが、俺を見上げる。
テーブルの?
俺は、テーブルを見る。
皿に盛られたクッキーが……。
あるって言う事は、食べても良いんだよな?
けど、その前に……。
索敵。
索敵の効果で、周りのモノに赤と青の色が灯る。
まあ、毒を盛る事は無いと思うが……。
うん!問題無い!
テーブルのクッキーは青!
俺は頷き、サクヤの頭を撫でる。
「大丈夫。平気だよ」
サクヤは、嬉しそうに、手を伸ばす。
「甘くて、サクサクして、美味しんよ♪」
サクヤの笑顔につられ、俺も一枚、口に運ぶ。
うん!うまい♪
そうこうしているうちに、メイドさんが戻って来る。
「お待たせしました。アヤの実のジュースです」
「ありがとうなんよ♪」
サクヤの笑顔につられ、メイドも笑う。
「すいません。クッキー頂いています」
「かまいませんよ。その為に、用意した物ですから……」
「あ、あと、すいません。モノを知らない者なので……。緑茶の事……」
俺は、ついでに謝る。
メイドは、にっこりと笑い、大丈夫ですと、言ってくれた。
「ジャショウ。何飲んでるん?」
「紅茶だよ」
「少し、飲みたいんよ♪」
サクヤにねだられて、一口飲ませてやることにする。
「~~~。苦いんよ!」
サクヤは、慌てて、ジュースを飲む。
俺は、笑いながら、サクヤの頭を撫でる。
「クッキーと一緒に、飲んでごらん?」
サクヤは、言われるがまま、クッキーを食べ、紅茶をすする。
相変わらず、躊躇いが無い。
それだけ、信頼してくれてると言う事か。
サクヤが、こちらを向く。
その顔は、満面の笑みで、
「苦く無いんよ!良い匂いで、美味しいんよ」
サクヤは、もう一度、クッキーを頬張り、紅茶をすする。
俺の、お茶なんだが……。
こんな笑顔を見せらえたら、何も言えなくなってしまう。
俺はサクヤを撫でながら、ゆったりと流れる時間を、堪能する事にした。




