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天翔雲流  作者: NOISE
スターリーの街角で
104/1838

無いわ~。ホンマ、無いわ~

 ギルドへと帰る道のり……。

 時間は一七時三十分……。

 キリカとの約束の時間を、三十分も超過してしまった……。

 ギルドの様子は、っと……。

 今日も、賑やかな声が響き渡っている。

 俺達は、ギルドの扉を開き、

「「「ただいま~」」」

 大手を振っで、中へと入る。

 今日も良い仕事をした!

「シャルちゃん!みんな~」

 涙目のキリカ。

 いつもの光景だ。

 シャルは厨房に入り、俺とサクヤは、テーブルを回る。

「ジャショウ!聞いてくれよ~。家のお袋と親父がさぁ~」

 果物屋のおっさん……。

 今日は、随分と深酒だ。

 酔い潰れかけながら、俺の肩に手を乗せる。

「どうしたんです?」

「ああ……。売れ残りを持って帰ったら、すごい剣幕で……。シャルちゃんとサクヤちゃんを見習えって……」

「元気になって、良かったじゃないですか?」

「元気になり過ぎだよ~。もう……」

「そう言えば、武器屋の親父も、飲みに誘ったら、仕事の邪魔だ!って」

「あの、酒飲みがなぁ……」

「家の兄貴もだよ~。目に熊なんか作ってさ。気持ち悪く笑うんだ……」

 口々に、近況を報告する……。

 俺、し~らね!

 適当に、相槌を打ちながら、ジョッキを運ぶ。

 ギルドに、活気が満ちる。

 て言うか、酒場だよね……。

 これじゃあ……。

「しっかし、うち等の商店街も、よりいっそう、活気が出て来たよな!」

「ああ!お前の服屋、貴族から依頼を貰ったんだろう?」

「名前は、確か……」

「侯爵様の、アルブレッド・ラセス様だ!」

「ああ!あの武人肌の!」

「それだけじゃ無い!度々、お忍びの貴族も訪れている……」

「うち等の商店街は、質と信頼をモットーにしているからな!」

「ああ!」

 乾杯の音頭。

 ジョッキがぶつかり、良い音がする。

 商店街も、活気が良いらしい。

「それもこれも、小さな女神様達のお陰だ!」

「もう!冒険者なんよ!」

 サクヤが、絡まれている。

 まあ、どっちかと言うと、可愛がられているのか……。

 トコトコと料理を運び、その度に、頭を撫でられている……。

 俺も、

「ジャショウ!あの肉、どう捌こう?」

 おっさん……。

 困りながらも、にやけている……。

「お前等も、責任もって、食いに来いよ!」

 ハイハイ……。

 俺は頭を下げて、カウンターに行く。

 酔っぱらいの相手など、してられるか!

 不意に、勢いよく扉が開かれる。

「「「いらっしゃ~い!」」」

 振り向くと、青い軍服に身を包んだ男が、直立して、その場に居た。

「冒険者のジャショウ!及び、シャル、サクヤ!勅命である!」

 男は、真っ直ぐと俺を見据え、呼吸を整える。

「明日、六時に馬車を寄こす!魔獣・ギルバードの毛皮を持ち、以上の三名、及び、ギルム、キリカは王城に来られたし!以上!」

 男は、踵を返し、ギルドから出て行った。

 って、ちょっと待て!

 何?王城って……。

 俺達は固まり、しばし、呆然とする。

 一同の視線が、俺に集中する……。

 俺は、頬を掻き、明後日の方を向く。

「王城って……」

「そんな事より、魔獣・ギルバードって……」

「お主……」

 ギルムが俺の肩に手を乗せ、首を横に振る。

「さ、さっきの人って……?」

「近衛兵長じゃ……」

「王城に行くって……?」

「国王との謁見じゃな」

 さっきまで、近衛兵長が立っていた処を指さし、ひきっつた顔で、ギルムを見詰める。

 王と謁見?

 一冒険者がか?

しかも、成りたての……。

 無いわ~。ホンマ、無いわ~。

 サクヤは首を傾げ、シャルは、俺と同様、ぎこちなく笑っている……。

 キリカは、と言うと……。

 いかん!ひきつけを起こしてる!?

 シャルが、慌てて介抱する。

 俺はと言うと……。

「無いわ~。ホンマ、無いわ~」

 一同、一斉に立ち上がる。

「「「無いのは、お前の戦歴だ!!」」」

 一同、総突っ込み!

 夏の夜空に、俺の乾いた笑いが、木霊した。


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