無いわ~。ホンマ、無いわ~
ギルドへと帰る道のり……。
時間は一七時三十分……。
キリカとの約束の時間を、三十分も超過してしまった……。
ギルドの様子は、っと……。
今日も、賑やかな声が響き渡っている。
俺達は、ギルドの扉を開き、
「「「ただいま~」」」
大手を振っで、中へと入る。
今日も良い仕事をした!
「シャルちゃん!みんな~」
涙目のキリカ。
いつもの光景だ。
シャルは厨房に入り、俺とサクヤは、テーブルを回る。
「ジャショウ!聞いてくれよ~。家のお袋と親父がさぁ~」
果物屋のおっさん……。
今日は、随分と深酒だ。
酔い潰れかけながら、俺の肩に手を乗せる。
「どうしたんです?」
「ああ……。売れ残りを持って帰ったら、すごい剣幕で……。シャルちゃんとサクヤちゃんを見習えって……」
「元気になって、良かったじゃないですか?」
「元気になり過ぎだよ~。もう……」
「そう言えば、武器屋の親父も、飲みに誘ったら、仕事の邪魔だ!って」
「あの、酒飲みがなぁ……」
「家の兄貴もだよ~。目に熊なんか作ってさ。気持ち悪く笑うんだ……」
口々に、近況を報告する……。
俺、し~らね!
適当に、相槌を打ちながら、ジョッキを運ぶ。
ギルドに、活気が満ちる。
て言うか、酒場だよね……。
これじゃあ……。
「しっかし、うち等の商店街も、よりいっそう、活気が出て来たよな!」
「ああ!お前の服屋、貴族から依頼を貰ったんだろう?」
「名前は、確か……」
「侯爵様の、アルブレッド・ラセス様だ!」
「ああ!あの武人肌の!」
「それだけじゃ無い!度々、お忍びの貴族も訪れている……」
「うち等の商店街は、質と信頼をモットーにしているからな!」
「ああ!」
乾杯の音頭。
ジョッキがぶつかり、良い音がする。
商店街も、活気が良いらしい。
「それもこれも、小さな女神様達のお陰だ!」
「もう!冒険者なんよ!」
サクヤが、絡まれている。
まあ、どっちかと言うと、可愛がられているのか……。
トコトコと料理を運び、その度に、頭を撫でられている……。
俺も、
「ジャショウ!あの肉、どう捌こう?」
おっさん……。
困りながらも、にやけている……。
「お前等も、責任もって、食いに来いよ!」
ハイハイ……。
俺は頭を下げて、カウンターに行く。
酔っぱらいの相手など、してられるか!
不意に、勢いよく扉が開かれる。
「「「いらっしゃ~い!」」」
振り向くと、青い軍服に身を包んだ男が、直立して、その場に居た。
「冒険者のジャショウ!及び、シャル、サクヤ!勅命である!」
男は、真っ直ぐと俺を見据え、呼吸を整える。
「明日、六時に馬車を寄こす!魔獣・ギルバードの毛皮を持ち、以上の三名、及び、ギルム、キリカは王城に来られたし!以上!」
男は、踵を返し、ギルドから出て行った。
って、ちょっと待て!
何?王城って……。
俺達は固まり、しばし、呆然とする。
一同の視線が、俺に集中する……。
俺は、頬を掻き、明後日の方を向く。
「王城って……」
「そんな事より、魔獣・ギルバードって……」
「お主……」
ギルムが俺の肩に手を乗せ、首を横に振る。
「さ、さっきの人って……?」
「近衛兵長じゃ……」
「王城に行くって……?」
「国王との謁見じゃな」
さっきまで、近衛兵長が立っていた処を指さし、ひきっつた顔で、ギルムを見詰める。
王と謁見?
一冒険者がか?
しかも、成りたての……。
無いわ~。ホンマ、無いわ~。
サクヤは首を傾げ、シャルは、俺と同様、ぎこちなく笑っている……。
キリカは、と言うと……。
いかん!ひきつけを起こしてる!?
シャルが、慌てて介抱する。
俺はと言うと……。
「無いわ~。ホンマ、無いわ~」
一同、一斉に立ち上がる。
「「「無いのは、お前の戦歴だ!!」」」
一同、総突っ込み!
夏の夜空に、俺の乾いた笑いが、木霊した。




