二人が選んだ報酬……。
毛皮に買い手……。
由緒正しき、武人肌の侯爵だそうだ……。
ガルガトさんは、あんまり気に入らないと言っていたが、庶民からの人気も高く、今回買い手になったことで、ガルガト呉服店は、一躍注目の的になったらしい。
気に入らないと言ったが、あの爺さん、本当に気に入らないのであれば、国王だろうと売りはしない。
なんだかんだ言って、納得しているんだろう。
俺とガルガトさんが、そんな話をしている間、シャルとサクヤは、ザグメさんにアヤの実を剥いてもらい、お茶をしていたらしい。
帰り際、ザグメさんが、ガルガトさんに聞こえない声で、侯爵からの依頼、張り切っているって、教えてくれた。
名残惜しそうにするサクヤの頭を撫でて、呉服店を後にする。
その後は、武器屋に行った。
先述、述べなかったが、ここは、鍛冶屋もやっている。と言うか、そっちがメインだ。
主人のおっさんは、髭もじゃで、いかにもって言うドワーフだ。
俺達の持ってきた鉄鉱石を見て、目の色が変わる。
何だか、早口でまくしたてられたが、要約すると、この鉄鉱石には、風の魔力が符呪しているそうだ。
天然物で、魔力を帯びているモノは、珍しいらしい……。
ドワーフのおっさんは、俺達に酒を買ってくるように言い、炉の火を調整し始めた。
俺達が、酒を買って来る頃には、鉄鉱石は溶かされ、真っ赤な炎に変わっていた。
おっさんは、俺達を見ると、勢い良く頭を下げ、また捲し立てる。
要約すると、これに見合う、金額が払えないそうだ。
俺達は、払える分で良いと言うと、首を横に振り、儂の気が済まないと……。
相変わらず、此処の人達は、頑固で、良い人ばかりだ。
この鉄で打った武器で、お金を用意してもらう事で手を打つことにした。
今度は、靴屋。
昨日会った、靴屋の兄ちゃんは、目の下に熊を作り、迎えてくれた。
俺達は、良い毛皮が手に入った事。ガルガトさんがなめしてくれていることを話すと、『俺を、寝かさないつもりか~~!』
と叫んで、歓喜していた。
兄弟そろって、忙しない人達だ……。
さてと、後は果物屋……。
店先には、お爺さんと並んで、お婆さんも立っていた。
シャルとサクヤは、それを見やると、一目散に駆け寄った。
「お婆ちゃん、無理しちゃあかんよ!」
「そうですよ!」
「おやまあ!女神様が、来てくださった」
お婆さんになだめられ、二人は、照れ臭そうに笑う。
「今日も治療するんよ!」
「今日は、お爺さんも!」
「おやまあ、儂もかい?」
「お爺ちゃん、左手痛いんでしょう?」
「おやおや。女神様に目は、誤魔化せんのう」
「ほんに、ほんに」
「もう、女神様じゃ有りません!」
「冒険者なんよ!」
「ほうか、ほうか」
二人は、お爺さんとお婆さんを、居間に引っ張り、治療を始める。
「ジャショウは、店番してるんよ!」
「お、俺がかぁ~」
「そうです!」
俺は、店先に取り残され、顔を引きつらせる……。
「と、取り合えず、商品を陳列しなおしておくか……」
後ろからは、暖かな光が漏れている。
まあ、良いか……。
しばらくして、四人が戻って来た。
お爺さん……。
すげえ、肩回してる……。
婆さんも……。
「ほんに。これであと五年は働けるのう」
「ほんに、ほんに」
「五年じゃ無いんよ。十年なんよ♪」
「ほうか、ほうか!」
「女神様、ありがとうなぁ」
「女神様じゃ有りません!冒険者です!」
「ほうか、ほうか」
四人の談笑……。
俺は、苦笑交じりに眺める。
「そいじゃ、小さな冒険者さん。今日も、アヤの実、食っていくかい?」
爺さんが、店先のアヤの実を手に取る。
「ん~、ん!」
サクヤは、それを止めて、リュックを突き出す。
「お土産なんよ♪」
「こりゃまた……」
おお!爺さんも商売人の目をしてる。
「婆さんや」
「どうしたん?お爺さん」
「このアヤの実……」
婆さんは、手渡されたアヤの実を見て、目を見開いている。
「ほんに、これ……」
「ああ、ああ!婆さん、何とも立派なアヤの実じゃ!」
「まだ、少し熟しては居らんが、店先に並べるには丁度良い!」
「何を言っているんだい!これ程のもん、贈答品に持って来いじゃ!」
シャルとサクヤは、誇らしげに笑う。
「ほんに。売ってくれるのかえ?」
「ん~ん!あげるんよ♪」
「何言ってるんだい!?体治してもらって、こんな物まで貰えんよ!」
「そうじゃ!罰が当たる!」
「ん~ん!爺ちゃんと婆ちゃんに会えるから」
「ならん!嬢ちゃんは冒険者じゃ。しっかりと報酬を貰う義務がある!」
そう言って、爺さんは、金庫に手を伸ばす。
「金貨三枚……。いや……」
「爺ちゃん。だったら、金貨一枚で良いんよ」
「その代わり……」
シャルとサクヤが、顔を見合わせる。
「「また、遊びに来て良いですか?」」
華の様な笑顔。
次の瞬間、爺さんと婆さんは、二人を抱きしめていた。
俺から、言う事は無い。
二人が選んだ報酬……。
お金でも無い……。
名誉でも無い……。
二人が引き寄せた、絆……。
俺は、何時までも、何時までも、二人を見守ろうと、心に誓った。




