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天翔雲流  作者: NOISE
スターリーの街角で
103/1838

二人が選んだ報酬……。

 毛皮に買い手……。

 由緒正しき、武人肌の侯爵だそうだ……。

 ガルガトさんは、あんまり気に入らないと言っていたが、庶民からの人気も高く、今回買い手になったことで、ガルガト呉服店は、一躍注目の的になったらしい。

 気に入らないと言ったが、あの爺さん、本当に気に入らないのであれば、国王だろうと売りはしない。

 なんだかんだ言って、納得しているんだろう。

 俺とガルガトさんが、そんな話をしている間、シャルとサクヤは、ザグメさんにアヤの実を剥いてもらい、お茶をしていたらしい。

 帰り際、ザグメさんが、ガルガトさんに聞こえない声で、侯爵からの依頼、張り切っているって、教えてくれた。

 名残惜しそうにするサクヤの頭を撫でて、呉服店を後にする。

 その後は、武器屋に行った。

 先述、述べなかったが、ここは、鍛冶屋もやっている。と言うか、そっちがメインだ。

 主人のおっさんは、髭もじゃで、いかにもって言うドワーフだ。

 俺達の持ってきた鉄鉱石を見て、目の色が変わる。

 何だか、早口でまくしたてられたが、要約すると、この鉄鉱石には、風の魔力が符呪しているそうだ。

 天然物で、魔力を帯びているモノは、珍しいらしい……。

 ドワーフのおっさんは、俺達に酒を買ってくるように言い、炉の火を調整し始めた。

 俺達が、酒を買って来る頃には、鉄鉱石は溶かされ、真っ赤な炎に変わっていた。

 おっさんは、俺達を見ると、勢い良く頭を下げ、また捲し立てる。

 要約すると、これに見合う、金額が払えないそうだ。

 俺達は、払える分で良いと言うと、首を横に振り、儂の気が済まないと……。

 相変わらず、此処の人達は、頑固で、良い人ばかりだ。

 この鉄で打った武器で、お金を用意してもらう事で手を打つことにした。

 今度は、靴屋。

 昨日会った、靴屋の兄ちゃんは、目の下に熊を作り、迎えてくれた。

 俺達は、良い毛皮が手に入った事。ガルガトさんがなめしてくれていることを話すと、『俺を、寝かさないつもりか~~!』

 と叫んで、歓喜していた。

 兄弟そろって、忙しない人達だ……。

 さてと、後は果物屋……。

 店先には、お爺さんと並んで、お婆さんも立っていた。

 シャルとサクヤは、それを見やると、一目散に駆け寄った。

「お婆ちゃん、無理しちゃあかんよ!」

「そうですよ!」

「おやまあ!女神様が、来てくださった」

 お婆さんになだめられ、二人は、照れ臭そうに笑う。

「今日も治療するんよ!」

「今日は、お爺さんも!」

「おやまあ、儂もかい?」

「お爺ちゃん、左手痛いんでしょう?」

「おやおや。女神様に目は、誤魔化せんのう」

「ほんに、ほんに」

「もう、女神様じゃ有りません!」

「冒険者なんよ!」

「ほうか、ほうか」

 二人は、お爺さんとお婆さんを、居間に引っ張り、治療を始める。

「ジャショウは、店番してるんよ!」

「お、俺がかぁ~」

「そうです!」

 俺は、店先に取り残され、顔を引きつらせる……。

「と、取り合えず、商品を陳列しなおしておくか……」

 後ろからは、暖かな光が漏れている。

 まあ、良いか……。



 しばらくして、四人が戻って来た。

 お爺さん……。

 すげえ、肩回してる……。

 婆さんも……。

「ほんに。これであと五年は働けるのう」

「ほんに、ほんに」

「五年じゃ無いんよ。十年なんよ♪」

「ほうか、ほうか!」

「女神様、ありがとうなぁ」

「女神様じゃ有りません!冒険者です!」

「ほうか、ほうか」

 四人の談笑……。

 俺は、苦笑交じりに眺める。

「そいじゃ、小さな冒険者さん。今日も、アヤの実、食っていくかい?」

 爺さんが、店先のアヤの実を手に取る。

「ん~、ん!」

 サクヤは、それを止めて、リュックを突き出す。

「お土産なんよ♪」

「こりゃまた……」

 おお!爺さんも商売人の目をしてる。

「婆さんや」

「どうしたん?お爺さん」

「このアヤの実……」

 婆さんは、手渡されたアヤの実を見て、目を見開いている。

「ほんに、これ……」

「ああ、ああ!婆さん、何とも立派なアヤの実じゃ!」

「まだ、少し熟しては居らんが、店先に並べるには丁度良い!」

「何を言っているんだい!これ程のもん、贈答品に持って来いじゃ!」

 シャルとサクヤは、誇らしげに笑う。

「ほんに。売ってくれるのかえ?」

「ん~ん!あげるんよ♪」

「何言ってるんだい!?体治してもらって、こんな物まで貰えんよ!」

「そうじゃ!罰が当たる!」

「ん~ん!爺ちゃんと婆ちゃんに会えるから」

「ならん!嬢ちゃんは冒険者じゃ。しっかりと報酬を貰う義務がある!」

 そう言って、爺さんは、金庫に手を伸ばす。

「金貨三枚……。いや……」

「爺ちゃん。だったら、金貨一枚で良いんよ」

「その代わり……」

 シャルとサクヤが、顔を見合わせる。

「「また、遊びに来て良いですか?」」

 華の様な笑顔。

 次の瞬間、爺さんと婆さんは、二人を抱きしめていた。

 俺から、言う事は無い。

 二人が選んだ報酬……。

 お金でも無い……。

 名誉でも無い……。

 二人が引き寄せた、絆……。

 俺は、何時までも、何時までも、二人を見守ろうと、心に誓った。


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