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天翔雲流  作者: NOISE
スターリーの街角で
102/1838

ああ。何だか懐かしい……。

 商店街の道を行く。

 往来の人だかりは、俺達が通ると、二つに別れ、道が開けてゆく。

 中には、後ろに並んで、歩く子供達も……。

 何か、ちょっとしたパレードだ。

 商店街の、中ほどまで行く。

 ガルガト呉服店が見える。

 店の前では、ザグメさんが打ち水をしていた。

「ザグメおばちゃ~ん!」

 サクヤが、走り出す。

 大八車が、他の人にぶつからないか、ハラハラさせられる。

 ザグメさんも、こちらに気付いたのか、柄杓を置いて、手を振ってくれた。

「あらあら。まあまあ!」

 ビックボアを見上げ、口に手を当てている。

 驚いている様だが、動じてはいない。

 この人も、肝っ玉母ちゃんみたいだ。

 おっとりしているが、ちょっとの事では動じず、凛としている。

 サクヤは、荷物を置いて、ザグメさんに抱き着く。

 勢いよく突進したサクヤを、両手いっぱいに抱きしめる。

 なんだか、親子の様だ。

「あんなあ!あんなあ!ビックボア獲って来たんよ♪いっぱい、果物も採って来たんよ♪」

「あらあら。まあまあ♪いっぱい冒険して来たのねえ。怪我はしていない?大丈夫?」

「うん♪」

 サクヤは、もっと撫でろと言わんばかりに、頭を押し当てている。

 年相応の姿に、何だかほっこりとする。

 サクヤも、甘えたい盛りなのだろう。

「ザグメさん、これ……」

 二人の間を邪魔したくは無いが、人だかりが……。

 俺達を囲う様に、人が集まっている。

「お義父さん!お義父さ~ん!」

「何じゃ~い!!」

 野太い声が聞こえる。

 ガルガトさんだ。

 のっそりと、熊の様な体躯の老人が現れる。

「な、何じゃ!それは!」

 おっさんと同じリアクション。

 俺は、苦笑する。

「約束したろ?」

「く、がははは!坊主は、予想の斜め上を行く!奥に周れい!」

 のっしのっしと、歩くガルガト。

 俺は、それに続いて、裏へと周った。

 レンガ造りの、大きな倉庫……。

 鉄の大扉をガルガトは、ゆっくりと開ける。

 中から、冷気が流れ出て来る。

 大きなフックに吊るされた肉。

 血の匂いが、鼻にこびり付く。

「ここは?」

「肉の保冷庫。兼、作業場じゃ」

 天井から吊るされたフックを指さし、ビックボアを掛けろと促す。

 俺は頷き、丁寧に吊るす。

「舌は、どうした?」

「おっさんが、焼いてくれた」

「愚息がか?」

「うん」

「まったく、あ奴は……」

 ガルガトは、作業場の奥から、二本のナイフ……。にしては、デカいか……。

 まあ、ナイフを用意してきた。

 ただのナイフじゃない……。

 俺の目に映ったそれは、魔力を帯びている。

「そのナイフ……」

「ん?これか……?特別な奴でな……」

「魔力を帯びてる……」

「分かるか!特注品じゃ」

 ガルガトは、喋りながらも、見事な手さばきで、ビックボアを解体してゆく。

 ナイフの切れ味もすごいけど……。

 無駄が無い!?

 ある種の、舞いを見ている様だ……。

「坊主が持ってきた毛皮なぁ」

「ん?」

「買い手が見つかったぞ」

「もう?」

「ああ。余り気に入らなかったが、貴族だ」

「ん」

「ご丁寧に、エンチャントの催促もしてきおった」

「売りたくないの?」

「当たり前じゃ!儂の作るモノは皆、儂の子供の様なモノじゃ……。でものう」

「でも?」

「また、坊主が、どえらいモノを持ってくると思ってな……」

「ん!」

「予想以上じゃ!」

 しわくちゃの顔を、更にしわくちゃにし、ガルガトが笑う。

 俺も、つられて笑う。

「今度は、何を持ってくる?龍か?」

 冗談交じりの言葉に、俺は大きく頷く。

「何時かきっと……」

「がはは!ああ、持ってこい!」

 単調な会話……。

 一つ、二つ呟いて笑う……。

 何だか、懐かしい……。

 断片的な記憶。

 転生する前の記憶……。

 ああ。何だか懐かしい……。


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