ああ。何だか懐かしい……。
商店街の道を行く。
往来の人だかりは、俺達が通ると、二つに別れ、道が開けてゆく。
中には、後ろに並んで、歩く子供達も……。
何か、ちょっとしたパレードだ。
商店街の、中ほどまで行く。
ガルガト呉服店が見える。
店の前では、ザグメさんが打ち水をしていた。
「ザグメおばちゃ~ん!」
サクヤが、走り出す。
大八車が、他の人にぶつからないか、ハラハラさせられる。
ザグメさんも、こちらに気付いたのか、柄杓を置いて、手を振ってくれた。
「あらあら。まあまあ!」
ビックボアを見上げ、口に手を当てている。
驚いている様だが、動じてはいない。
この人も、肝っ玉母ちゃんみたいだ。
おっとりしているが、ちょっとの事では動じず、凛としている。
サクヤは、荷物を置いて、ザグメさんに抱き着く。
勢いよく突進したサクヤを、両手いっぱいに抱きしめる。
なんだか、親子の様だ。
「あんなあ!あんなあ!ビックボア獲って来たんよ♪いっぱい、果物も採って来たんよ♪」
「あらあら。まあまあ♪いっぱい冒険して来たのねえ。怪我はしていない?大丈夫?」
「うん♪」
サクヤは、もっと撫でろと言わんばかりに、頭を押し当てている。
年相応の姿に、何だかほっこりとする。
サクヤも、甘えたい盛りなのだろう。
「ザグメさん、これ……」
二人の間を邪魔したくは無いが、人だかりが……。
俺達を囲う様に、人が集まっている。
「お義父さん!お義父さ~ん!」
「何じゃ~い!!」
野太い声が聞こえる。
ガルガトさんだ。
のっそりと、熊の様な体躯の老人が現れる。
「な、何じゃ!それは!」
おっさんと同じリアクション。
俺は、苦笑する。
「約束したろ?」
「く、がははは!坊主は、予想の斜め上を行く!奥に周れい!」
のっしのっしと、歩くガルガト。
俺は、それに続いて、裏へと周った。
レンガ造りの、大きな倉庫……。
鉄の大扉をガルガトは、ゆっくりと開ける。
中から、冷気が流れ出て来る。
大きなフックに吊るされた肉。
血の匂いが、鼻にこびり付く。
「ここは?」
「肉の保冷庫。兼、作業場じゃ」
天井から吊るされたフックを指さし、ビックボアを掛けろと促す。
俺は頷き、丁寧に吊るす。
「舌は、どうした?」
「おっさんが、焼いてくれた」
「愚息がか?」
「うん」
「まったく、あ奴は……」
ガルガトは、作業場の奥から、二本のナイフ……。にしては、デカいか……。
まあ、ナイフを用意してきた。
ただのナイフじゃない……。
俺の目に映ったそれは、魔力を帯びている。
「そのナイフ……」
「ん?これか……?特別な奴でな……」
「魔力を帯びてる……」
「分かるか!特注品じゃ」
ガルガトは、喋りながらも、見事な手さばきで、ビックボアを解体してゆく。
ナイフの切れ味もすごいけど……。
無駄が無い!?
ある種の、舞いを見ている様だ……。
「坊主が持ってきた毛皮なぁ」
「ん?」
「買い手が見つかったぞ」
「もう?」
「ああ。余り気に入らなかったが、貴族だ」
「ん」
「ご丁寧に、エンチャントの催促もしてきおった」
「売りたくないの?」
「当たり前じゃ!儂の作るモノは皆、儂の子供の様なモノじゃ……。でものう」
「でも?」
「また、坊主が、どえらいモノを持ってくると思ってな……」
「ん!」
「予想以上じゃ!」
しわくちゃの顔を、更にしわくちゃにし、ガルガトが笑う。
俺も、つられて笑う。
「今度は、何を持ってくる?龍か?」
冗談交じりの言葉に、俺は大きく頷く。
「何時かきっと……」
「がはは!ああ、持ってこい!」
単調な会話……。
一つ、二つ呟いて笑う……。
何だか、懐かしい……。
断片的な記憶。
転生する前の記憶……。
ああ。何だか懐かしい……。




