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天翔雲流  作者: NOISE
スターリーの街角で
101/1838

間違いねえ。こいつらは、俺達の英雄だ!

「しっかし、なんちゅうモノを、持ってくるんだ!」

 半ば、呆れながら、おっさんはビックボアを触る。

「なあ兄貴!毛皮。毛皮、家にも回してくれよ!」

「ああ……。親父に言っておく……」

「昨日、ジャショウが持ってきてくれた毛皮、家の兄貴ったら、夢中になって新作作っているんだぜ」

「だろうな……。職人にとって、これ程の素材前にしたら……」

 ビックボアを前に、俺より二つか三つ年上だろうか……。

 少年が、目を輝かして、おっさんに歎願している。

 この少年。靴屋の兄ちゃんの弟らしい。

 何時もここで、靴磨きをしている。

「なあ、この肉、焼いてくれよ!」

 一同から、声が上がる。

 おっさんは頭を掻き、難しい顔で、ビックボアを見上げる。

「これをかあ……」

「なあ、良いだろう?」

「肉って言うのはな、少し寝かした方が、美味いんだ……。けど、こんな鮮度の良い肉も……」

 おっさんは、物々しい包丁を取り出し、ビックボアに向ける。

 しかし、その手は止まり。

 深いため息を吐いた。

「だめだ!毛皮は、切れねえ!それに、少しでも傷つけたら、親父にどやされる!」

「はぁ……。おやっさん、おっかねえしなぁ」

 周りから、失笑が漏れる。

「けれど此処なら!」

 おっさんの手が、ビックボアの口に触れる。

 口が大きく開かれ、真っ赤な舌が覗かせた。

「舌だ!最高の珍味だ!」

 今度は、感嘆。

 二つの舌が、斬り落とされる。

 サクヤよりも大きい。

 手際よく、調理されていく。

「タレより塩の方が良いんだが……」

「おっさん!塩の実!」

 俺は、すかさず、懐から塩の実を取り出す。

 さっき、ビックボアの血抜きをしている途中、採取していたんだ。

 おっさんは、にかっと笑い、塩の実を受け取った。

 おっさんが、調理をしている間、他の戦利品で盛り上がった。

「嬢ちゃんそれは?」

「アヤの実なんよ♪お爺ちゃんとお婆ちゃんにあげるんよ♪」

「こりゃまた、でっかい……」

「こっちには、薬草が……」

「はい!それは、ギルドを通して、売りたいと思いす」

「良いコカの葉だ……。こうしちゃいられねえ!帰ったら、錬金の準備だ!」

「こっちには、鉄鉱石が……。しかも純度が高い!?」

「武器屋さんに持っていくんよ♪」

「ええ。約束しましたから」

「家か!早速、炉に火を入れねえと!」

「か~~~。他の冒険者なんかに、金かけらんね~!」

「ああ!こんな良いもん見せられたら、職人の血が騒ぐってもんよ!」

 俺達は、恥ずかしさと誇らしさで、胸がいっぱいだ。

 サクヤの尻尾が、ピコピコ動いている。

「な、なあ……」

 不意に、声が上がる。

 俺達は、首を傾げ、声の方を向く。

「なあ、あんた達、もしかして、小さな女神様じゃないのか?」

 前に出た男が、おずおずと尋ねて来る。

 小さな女神様?

 不思議そうな顔をする俺達に、

「俺は、果物屋やっている処の、小倅で……」

「こせがれ?」

「ああ。サクヤ。息子って事だよ」

「お爺ちゃんとお婆ちゃんの子供なん?」

 サクヤが、前に出る。

「ああ。家のお袋、ずっと立てなかったんだ」

「ああ。それが、昨日帰ったら、ぴんぴんしてたなあ……」

「ああ。どうしたのか?って聞いたら、女神様が、治してくれたんだって……」

「ああ。みんなビックリしてたなあ」

「小さな女神様……。みんなが、願ってくれたおかげで治してもらえましたって……」

「あれってまさか……」

 一同の目が、シャルとサクヤに向く。

 俺は、頬を掻き、乾いた笑いを上げる。

「お婆ちゃん無理していないん?」

「まだ、完治している訳では無いんですから」

 シャルとサクヤは、心配そうに男を見る。

「やっぱり……」

「女神様……」

「女神様だ……」

 やばい、話が変な方向に……。

「お前達!力の安売りは良く無いぞ!」

 おっさんが、真剣な声で、諫める。

 安売り……。

 違う!

 俺は、首を横に振る。

「違うよ……。おっさん」

「そうなん!みんな良くしてくれたんよ!」

「そうね。みんなから貰った優しさを、私達は、ただちょっと、お返ししただけです!」

「そうなんよ!みんな、お婆ちゃんの事、心配していたんよ!」

「私達は、冒険者です!与えらえた対価、しっかり返して……。これだけじゃ、足りないかもしれません……。それでも……!」

 シャルとサクヤの真剣な目……。

 一同は、黙り込む。

 果物屋のおっさんに至っては、涙している。

「だ、そうだ……。おっさん」

 俺は、やれやれと笑い、おっさんを見る。

 おっさんは、目を見開き、笑いだす。

「くくく……。お前達!この小さな冒険者達は、これだけ俺達に良くしてくれて、まだ足りないという……。昨日から俺達は、何度驚かされた?何度笑わしてもらった?間違いねえ。こいつらは、俺達の英雄だ!」

 一斉に、歓声が沸き起こる。

 俺達は、唖然とし、周りの人達を見回す。

 また、差し入れの山……。

 本当……。

 何時になったら、返しきれるんだ?

 この人達に貰った優しさは……。


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