ステータスオープン!
『ジャショウちゃん。ジャショウちゃん。黄昏ているところ悪いけど、状態確認しちゃわない?』
『状態確認?名前は、ジャショウで、絶賛迷子中って言うだけじゃない?』
俺は、本日何度目かの、苦笑を浮かべ、ナビ子に聞き返す。
そもそも、黄昏て居たのだって、ナビ子の説明が、いい加減だからだろうが……。
いや。心の病に、答えを見出そうとしたのがいけなかったか……?
『そうじゃなくて。この世界には、特別な呪法があるの。ステータスオープンって、念じてみて』
呪法……?
訝し気に思いながらも、その場に立ち上がり、唱えてみる事とする。
あれだ……。これで何も起きなかったら、ただの心の病。無視する事にしよう。
『ステータスオープン』
目の前に、青い粒子が、集まっていく。
青い光は、四角い枠を作り、枠の中に、文字が浮かび上がる。
おっふ……。
慌てて後ろに飛びのくも、青い画面はついてくる。
恐る恐る、触って観ようとするも、すり抜けて、触る事が出来ない。
あれか?ナビ子は、俺の作った幻聴では無かったのか?
何にしても、また一歩前進だ。
ナビ子には、少し優しくしよう……。
取り合えず、ステータス画面の確認だ。
名前:ジャショウ
性別:男
種族:ハイヒューマン(?)
年齢:12
HP:10000
MP:5000
錬気:300000
筋力:1530 体力:1520
器用:750 頑強:1600
敏捷:2000 反応:1630
知力:330 精神:1500
幸運:650
特殊スキル
言語理解LV3 千里眼LV2
洞察力LV2 気配察知LV3
武術の心得LV6 限界突破LV2
念話LV2
戦闘スキル
格闘LV8 刀剣LV7 槍LV7
斧LV6 鞭LV5 弓:LV7
投術LV8
一般スキル
索敵LV8 鑑定LV1 野営LV5
固有スキル
鬼神LV5 魔法の耐性LV6
毒の耐性LV8 自然治癒LV5
魔術スキル
錬気スキル
剛気LV1 創気LV1 放気LV1
加護
世界神の寵愛
武神の加護
時巡りの使者
『あちゃ~。やっぱ、ジャショウちゃん、強くなりすぎちゃったかな~?』
エステカは、大げさに驚いて見せる。
俺は首を傾げ、ステータス画面を見つめる。
『能力値の基準が解らん……。高いのか低いのか解らないから、何とも言えない。あと、能力項目が多すぎる』
『仕方ないじゃない。生命をデータ化するなんて、本来こんなんじゃすまないわよ。そんな事より基本、一般人の能力値は、100が平均で、HPとMPは、300。錬気に至っては、200ぐらいが平均かな……。それだって、成人男性の平均よ』
『成人男性って、何歳?』
『16歳で成人よ。ジャショウちゃんの年なら普通、能力値は60から、多くて70ってところね』
『は~。じゃあ、高いっすね……。けど、チート能力とか無いんすか?』
『チート?』
『そう、チート……。敵のスキルを強奪するとか、近代兵器を持ち込むとか……』
『ジャショウちゃんの近代兵器って、刀とか火縄銃だよ?それに、スキル強奪って、なんのラノベ?』
沈黙が走る……。と言うか、なんでこんな知識があるのか、疑問に思い首を傾げる。
そもそも、さっきから、俺は横文字の言葉を喋っている。
どうなっているんだ?
『あれ……。俺、何言ってるんだ……?』
『おかしいなぁ?ジャショウちゃんに授けたものって、言語知識と、私の寵愛と、あとは……』
そう言いながらナビ子は、俺のステータス画面にカーソルを這わせる。
さっきから自分の言動に、違和感を覚える。
そもそも、カーソルって何だよ……?
『あっ!一般常識を植え付ける代わりに、異世界転生のススメって言う、本の知識を植え付けちゃった……』
急に大きな声で、ナビ子は呟く。
大きな声で、呟くって……。なんぞ?
『異世界転生のススメって?』
俺はまた小首を傾げ、問いただす。
『うん……。読んでそのままの意味。異世界に行った人達の、伝記みたいなもの。それに、何だか色んな知識も紛れ込んでる……』
『で、この世界の、常識は?』
『無い……』
ナビ子は、申し訳なさそうに、答える。
『あはは……。でも大丈夫!私が全面的に、バックアップするから。けれど、おかしいなぁ……。転生の儀で、バグが生じたのかしら?』
ナビ子は、笑う。
苦笑とも思えるその笑いに、俺はつられ、乾いた笑いを木霊させた。




