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9.否定の言葉

 ここ三か月過ごして、気づいたことがあった。

 俺はどうやら馬鹿らしい、ということだ。三か月こうしてちゃんと授業を受けているのに、全然成績が上がらない。

 授業の内容が理解できない。まじで焦っている。


 正直今までは、俺はまだ本気を出していないだけだと思っていた。やれば出来る子だと思っていた。そう言われて育った。まさか出来ない子だとは……。

 でもこういう自意識っていうのは、誰もが持ってるもんだよな。自分のことを不幸だと思ったり、誰でも救えると勘違いしたり……。


 憂鬱な気分になると、昨日のことを思い出す。同年代の女子に、あからさまな敵意を向けられた。はっきり言ってショックだった。


 悩みの張本人である瑠璃子ちゃんは、授業中ずっと居眠りをしている。

 俺はとりあえず赤点だけは避けようと思い、黒板に目を向けた。


 小学生の頃は、何もしなくたって百点がとれた。でも中学生になって、初めて理解が追いつかなくなった。そこで俺は考えることを止めた。

 友達は多かったし、誰からも相談を受けた。人との絆があって、十分幸せだった。

 でもそんなものは、こうして環境を変えられてしまえば無意味になる。結局、最後に役立つのは知識だってことかな。


 無人島に何か一つ持っていくなら何にするかって質問があるが、知識さえあれば何を選ぶか悩む必要もないんだもんな。

 なんだか最近、俺が大事にしていたものを否定され続けている。絆とか友情とか、そういうものが全部無意味だと思い知らされている。


 俺は最悪な気分なまま、授業を終えた。

 

 昼休み、俺は自分の机に弁当を広げた。ほんの数か月前まで菓子パンしか食べていなかったから、健康的な食事なのに体が馴染まず逆に不健康になりそうだった。

 弁当箱の中には卵焼きがあった。昔、あいつに貰った卵焼きはそれはそれは旨かった。そして見返りとして受け取った卵焼きは、それはそれは酷い出来だったな。


 俺は懐かしいことを思い出して、思わず笑ってしまった。一人で弁当を食べ、一人でほくそ笑む俺は、完全に異常者だった。だからまた冷たい視線を感じた。


 瑠璃子ちゃんにも同じ目を向けられているのか?

 俺は瑠璃子ちゃんの席を見た。瑠璃子ちゃんは居らず、そこには違う奴が座り、たむろしていた。


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