24.リビングデッドヒーロー
とりあえずこれで、前編「リビングデッドヒーロー」完結です。
後編は一か月以内には上げたいと思います。
もし前編を気に入ってくれたなら、後編をお楽しみに待っていてください。後編の最後で少し前編の続きが出てきますので。ん?後編の最後で前編の続き?なんか日本語おかしいですね。
まあ、後編の最後で前編の補足が出てくると思っていてください。
PS:山口雅也様の素晴らしい小説を、勝手に引用してしまいました。引用したのにも関わらず、良い文章にはなっていないと思います。不快感を覚えた方には本当に申し訳なく思います。
翌日、瑠梨子は親戚から貰ったお下がりの制服を着て登校した。それは少しサイズが大きくて、だぼっとした感じがあった。
そして周りの変化に気づいた瑠梨子は、一度だけ俺の方を見て、寂しそうな顔をした。その寂しさの理由を、俺はまだ知ることができないけれど、いつかきっと分かり合って、助け合えると信じた。そういう強さが、俺にはあるから。
放課後、俺は読み終えた本を返すためにミステリー研究部の部室に向かっていた。そこにいるという確証はないけれど、なぜかいると分かっていた。
カエデに借りた本は難しいものだった。初心者向けとはお世辞にも言えない。しかし読み終えてみると、カエデが俺にこの本を貸した理由がなんとなく分かった。
最後の主人公の言葉は、俺を救うのに十分すぎるものだったから。
『生物は雄と雌に分かれ、性によって増殖する道を選んだばかりに、細菌のような分裂増殖による不死は失ったってこと。性の代償は死だった』
『なにを言いたいの、グリン? あたしにわかるように話してよ。あたしには難しすぎる』
『ああ、だから、俺が言いたいのは――お前に出逢えてよかったってことさ』
俺は部室の前に立ち、深呼吸をした。正直に言えば、今にも逃げ出したい気持ちで一杯なのに、俺は逃げない。カエデに伝えたかったから。
お前のおかげで色んなものと向き合えた。逃げ続ける俺を、捕まえたのはお前なんだと伝えたかった。
「お前に出逢えてよかった」――俺はそんな言葉を、今から言おうとしている言葉を呟いてみた。
なんだか気恥ずかしくて、口に出すのも憚られる言葉だけれど、俺は言うんだ。
なぜなら、気持ちを言葉にすれば魔法に変わってくれるかもしれないのだから。でも、それは呪いになるという危険性も孕んでいる。
それはどうしようもなく怖くて、歩みを止めたくもなるけれど、そんな時はあいつのことを思い出す。
あの日俺に立ち上がる勇気をくれた、幸せと――名前を手にしたヒーローを。
俺はドアを開いた。
前回の語り部から仮町に語り部を変更しようと思ったとき、楽しそうと思いました。でも書いてみると、これがまあ難しかったです。
というのも前回の語り部に、私を自己投影しすぎたせいで、仮町くんが神格化されてしまったんですよね。だから思い悩む仮町くんの心情は、とても書くのが難しかったです。
読み返してみると、あんまりうまくいっていない気がします……。
まあ、後編はまた語り部を戻すので、ちゃんと書けるかなと思います。
でもなあ、前編で語り部くんすごい大暴れしてたからなあ。ちゃんとうまく繋げられるかな……。
そんな馬鹿みたいな告白はともかく、読んでくださりありがとうございました。もしよろしければ「探偵とヒーロー」もよろしくお願いします。
そしていつも通り、酷評・批評お待ちしています。感想・アドバイス、なんでも送ってくだされば嬉しいです。