2.幼馴染の言葉
俺は母方の妹の家族、三河家に引き取られることになった。
三河家は三人家族だ。両親と高校一年生の女の子が一人いる。その一家とは小さい頃何度か会った。でもあまり話をしたことはなかったから、正直気まずかった。
でもまあ、住ませてくれるんだからそんなことも言っていられなかった。
最初の一週間は距離感を掴むのに必死だった。正直なんで俺を引き取ったのかさえ分からなかったからだ。でも話をして、ご両親とは打ち解けることができた。
ご両親は俺のことを本気で心配してくれていた。良い人たちだ。その恩に報いたいと思えた。
けれど娘さんの方は俺と話してくれなかった。まあ、気難しい年ごろなんだろう、と軽く考えていた俺は馬鹿だった。
越してきて三か月経ったのに、未だまともに会話をしてくれない。
昔梨花に言われた罵倒が頭を過った。
『ひーくんてさ。自分のことモテる男だと思っているでしょ。それ間違いだから。ひーくんみたいな他人を近づけない雰囲気出しちゃってる勘違い野郎は、絶対モテない』
あいつのしてやったりのにやけ顔と共にその言葉を思いだし、俺は苦虫を噛み潰したような顔になった。
別にモテるなんて考えちゃいなかったし、他人を近づけない雰囲気なんて出しちゃいない。でも、あいつが言ったことなら、多分そういうところが少しはあるんだろうなと思う。
初めて梨花に対する信頼感を嫌なものに感じた。
とりあえず、今のところ俺が解決しなきゃいけない問題は娘さん――三河留梨子と和解することだった。