14.言いづらい言葉
あの管理の仕方で、瓶を丸々一本失くすなんてことは信じられなかった。
ようは誰かが盗んだんだろうと疑っていた。まあ、だからどうということはないがな。
誰かが盗んだからなんだ。俺はもうあれこれと手を出すのをやめるべきだ。呪いはそろそろ解けるべきだ。だってあれは、子供の頃のくだらない夢なのだから。
高校生なんだ。夢の一つや二つ捨てて、そろそろ眠りから目覚めるのなんて簡単だ。
俺はそう考えて、折り合いをつけて、頭に浮かんだ推理を捨てた。
そうして、学校からの帰り道、重石が消えたように気が楽になった。俺はもう何もしなくていい。そうすれば傷つかない。傷つけることもない。そう思うと安心だった。
家に帰り、挨拶をして自室に行き、本を読んだ。昨日借りた本は、なんとか物語が動き始めるところまで進んでいた。だが、依然として読みづらく、初心者に勧めるような本じゃねえなと改めて思った。
ドアをノックして、叔母さんが部屋に入ってきた。俺はベッドから体を起こし挨拶した。
「突然ごめんね。はい、これ」
叔母さんが差し出したのはスマホだった。俺はどういうことか理解できず受け取れずにいた。
「あんたいらないって言ったけど、高校生ならいるでしょ。勝手に契約してきたから、好きに使いなさい」
叔母さんはその新品のスマホをひょいと投げた。俺は壊れるんじゃいかとひやひやしながらキャッチした。
「じゃ、エロいのばっか見るなよ」
叔母さんは年甲斐もなくいじらしい笑みを浮かべて去っていった。俺はお礼を言う余裕もなく、ただ去っていく背中を見送った。
スマホには三河家の三人の連絡先が登録されていた。俺はおもむろに梨花とあいつの連絡先を登録した。
でも、電話をかける気にはなれなかった。とてもそんな気分じゃない。弱い俺を、目的を失って放浪するように生きている俺の声なんて聴かせたくない。
俺のことをヒーローだと勘違いしているあいつらに、幻滅されたくなかった。
そしてこの日も、瑠梨子ちゃんは遅く帰ってきた。ジャージ姿だった。制服はどうしたのかと叔父さんが聞くと、彼女は捨てたと答えた。