表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/24

1.母の言葉

 前々回に投稿した『探偵とヒーロー』の続編です。

 できればそっちを読んでから読んでほしいですが、これを読んでからでも全然大丈夫だと思います。

 まあ、こんな駄文を読んでくださる優しい気持ちがあればですが……。


「人の幸せを願い、人の不幸を悲しめる人になりなさい。弱くてもいいから、なにかを成し遂げるような立派な人じゃなくてもいいから、人の気持ちを理解できる人になりなさい」


 小さい頃、俺の母親はよくそう言っていた。


 俺は大人の言葉に疑いを持つようなタイプじゃなかったから、ただひたすらにそうなれるように生きてきた。母親の期待に応えたいと思っていた。のちにその言葉がドラえもんからの引用であることを知って、ちょっとがっかりしたこともあったが、俺はその言葉を胸に抱え続けた。


 母親はよく、夜寝る前に本を読んでくれた。母親の声で聞かされる話は、どんな内容でも楽しくなった。妹はその声から作られる言葉を、魔法の言葉と呼んだ。


 俺はそんな妹を茶化しながらも、確かにそうだと思っていた。

 なんてことのない言葉を、輝かせるそれは、まるで魔法のようだった。


 だから小さい頃俺は、母親の魔法にかけられたのだろう。

 だから俺は手を差し伸べ続けてきた。見えたものに、届くものに、見境なくこの手を伸ばした。

 けれどあの日、魔法は解けてしまった。妹を殺そうとした日、友達を裏切った日、俺は全てを捨ててしまったんだろう。


 そして俺は、手を差し伸べることをしなくなった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ