森
旅人、いやレイが出かけてから少女は一人薪を集めていました。
森の夜は冷えます。
薪拾いは少女の日課となっていました。
「これくらいかな。」
たくさんの薪をロープでまとめ、少女は背中に背負いました。
そしてその場を去ろうとした、その時です。
「魔王様はまだ…」
門番の声です。
「っ!?」
いつの間にお城の近くに来てしまっていたのでしょうか。
少女は門番達の会話を聞いてしまいました。
「魔王様はまだ部屋から出てこないのか。」
「ああ。それほどあの少女が好きだったんだろうな…」
「帰ってきてほしいものだ。」
帰ってきてほしい。
その言葉を聞いた少女の瞳から、小さな雫がこぼれ落ちました。
その雫はぽとり、ぽとりと止まりません。
たまらなくなって、少女は駆け出しました。
走って走って、走りました。
薪が溢れようがかまいません。
木の葉で擦りむけようがかまいません。
ただ、この雫が…涙が止まってくれるなら
なんでもいい、その一心で…
「はぁ…はぁ…」
気がつくと、そこはレイのテントでした。
「おかえ…っ!どうしたんだい?!」
少女の姿にレイは驚きました。
そして涙を流す少女を優しくそっと抱きしめました。
「大丈夫。大丈夫だよ。」
そして優しく頭を撫でました。
レイの言葉に落ち着いたのか、少女の涙はようやく止まりました。
ハッとして少女は薪を見ました。
「あっ…薪。…ごめんなさい。」
一生懸命拾った薪は半分程の量になっていました。
しょんぼりする少女にレイは首を振ります。
「大丈夫。君が無事なら、それでいい。」
君さえ無事なら…