夜の集会
「今夜だな」
虎の突然の言葉に、茜はきょとんとした。
「何が今夜なの?」
「ああ、寄り合いさ。近所の猫が集まるんだ。そこでそれぞれ情報交換するのさ」
それって猫の集会!?本当にあるんだ!
「それ、私も行ける?」
元々茜は動物は好きだ。猫の集会があるなら見てみたいと思うのも当然だろう。しかし難色を示したのが虎だった。
「お前は顔を出さねえ方がいい」
「どうして?」
一拍置いてから虎は答えた。
「……お前は綺麗すぎるんだよ」
そのストレートな言葉に、茜は赤面した。猫なので、赤くなったかは疑問だが。
「そ、それと何か関係あるの?」
茜もなんとか声を振り絞った。
「よからぬことを考える奴もいるってことさ」
「でも虎はボスなんでしょ?」
「敵対してる連中もいるんだよ。そいつらに知られたらヤバイからな」
そうは言われても見たいものは見たい。
「虎の後ろで大人しくしてるから~」
「……仕方ねえな。しゃべるなよ?」
「うん!」
そして夜になると、どこからともなく公園に猫が集まってきた。
十匹は越えるだろう。どこにこんなにいたのか不思議だ。
「虎、変わりないか?」
皆が口々に虎に声をかける。まずはボスへの挨拶で始まるらしい。
「虎、その女は……」
私をめざとく見つけた猫が聞いてきた。
「ああ、皆に紹介しておく。俺の女だ。手出しするなよ」
ざわざわ
どよめきが起こった。
「そうか、虎もやっと女が出来たか」
おじいさんの猫は嬉しそうに話していた。
「じじい、余計なことは言うな!」
「めでたいことじゃないか。で、子供はいつ生まれるんだ?」
「他猫の家族計画に口を出すな!」
「でもそれだけ綺麗だと気をつけないとね」
姉御っぽいメス猫が話しかけてきた。
「ああ、だからここだけの話にしてくれ」
皆は口々に賛同の意を表し、情報交換が始まった。
「あそこの家ではたまにごはんをくれるぞ」
「新しく出来た店の裏にあるゴミ箱にはいいものが捨ててあるぜ」
皆は情報を交換し、縄張りの境界線も確認してから帰っていった。