エピローグ
茜はそれから警察や会社へ行き、突然旅行に行きたくなったのだと説明した。中々苦しい言い訳だが、猫になっていたなど誰に言っても信用してもらえないだろう。ただ浩だけは信じてくれた。
茜は猫になったこと、それから公園のボス猫に庇ってもらったこと、猫に特訓を受けたことなどを話した。浩は興味を示して聞いてくれた。
誰が信用してくれなくても、浩がわかってくれればそれでいいと、茜は思った。それからは月を見上げても猫になることはなかった。まるで夢だったようだが、茜がいなかったのは本当のことだ。それに猫たちのことは忘れることは出来なかった。
そしてそれから茜は仕事に忙殺されることになる。休んでいた分の仕事がたまっていたのだ。土日にも会社へ行き、仕事をする毎日。
しかし茜は気になっていることがあった。虎のことだ。何も言わずに出てきてしまった。せめて別れの挨拶くらいはしたかったのだ。
それから半年ほど経ってから、茜は浩と一緒に公園の虎に会いに行った。
「虎、茜だよ」
虎は警戒心が強いはずだが、茜の言葉にすぐに反応して姿を現した。
「虎、本当にありがとう。挨拶もしないでごめんね」
「この猫が虎か。立派な猫だな」
「うん、虎は強いんだよ」
虎はねぐらに帰ろうとした。しかし、茜を振り返り、着いてこいと言ってるようだった。茜は虎に着いて行った。
「みゃあみゃあ」
「にゃー」
虎の家には白猫と虎の赤ん坊らしき猫がいた。虎は見ろよと言わんばかりに胸を張っている。
「虎、奥さんが見つかったんだね」
「にゃー」
虎が鳴いた。
「まあな」
と言っているようだった。お互い大事な相手に会うことができて、茜は幸せな気持ちになった。
「虎、虎と過ごしたこと忘れないよ。ありがとう」
<おわり>




