VS ヤクザ そして何気に初戦闘
「おいおい、キッタネェ店だなここはよ。」
「ハックション!あークシャミやべー。」
「この棚とかマジ邪魔だな。」
一人のヤクザが、おらよ、というかけ声とともに近くの棚を蹴りとばす。乗っていたポーション類が床に落ち、割れる。
「スピカの嬢ちゃんよぅ、俺たちが来た理由、わかってるよねぇ?」
今度はロン毛のチャラい奴が女の子ーースピカに口を開く。にこやかに話しかけたつもりなのだろうが、その口は嫌らしく歪んでいる。
「は・・・はい。わかって・・・ます。」
スピカは完全に萎縮してしまったようで俯き、エプロンをぎゅっと握り、震えている。じゃぁさ、と最後の一人が話かける。
「積もり積もった借金1000万。耳を揃えて返してもらおうか?」
1000万!?この世界では単位はCと違うが、価値的には日本のと同じだ。つまり1円=1Cというわけだ。
そして今出た1000万。この金額はだいたい少し小さい城が建つくらい、といえばどれくらいの大金かわかってくれるんじゃないかと思う。
「・・・も、もうすこし・・・だけ、まってください・・・。」
「ああ!?無理に決まってんだろ!こっちは何ヶ月まったと思ってるんだ、ああ!」
ヤクザが大声でスピカを威圧する。それにしてもなぜこの店はこんな奴らに借金をしたんだ?
「おい、ちょっっとまってくれ。」
「ああ?だれだおめー。」
「今日この店に買い物に来た者だ。」
「・・・へ~ぇ。お前なかなか良い女じゃねぇか、なぁおまえら?」
「ああ、ここまでかわいい奴そうそういねーよ。」
「どう、俺らとこれから遊びに行かない?」
三人のヤクザ(バカ)は借金のことなんか忘れて俺の顔を食い入るように見てくる。正直きもい。だって男が男の顔見て可愛い、だぞ?
「確認するが借金は丁度1000万なんだな?」
「あ?ああ、そうだ。」
「え、なに?君が払ってくれるの?」
「可愛くて太っ腹なんてわたちかんげきちちゃう!」
なんていうかこいつら。人を苛つかせるプロだな。
「一つ賭けをしないか?外に出て俺とお前等三人で戦って俺が負けたら1000万、いや、3000万払ってやる。そのかわりお前等が負けたら借金は帳消し。どうだ?」
「は?なに、俺らと戦う?ぷ、ギャハハハ!冗談うまいねぇ君。」
「で、どうする?3000万だってよ。」
「でも負けたら親っさんに殺されるぜ?」
万が一を考えてだな、と三人が話し合う。見た目非力な女に見えるはずなのに、それでも躊躇させる親っさんて一体・・・?まずい、なんだかズラカルみたいな流れになってる。よし使いたくないが最後の手段だ。
「俺が負けたらそ、その、俺を好きにしてもいい。」
この言葉を言った瞬間四人の目が光った。ん?四人?え?バッ、と振り返るとスピカもバッ、って顔を逸らした。ちょっとだけショックだった。
「・・・おまえらヤろーぜ。」
「へ、へへへ、うへへへへ!」
「踏まれたい踏まれたい・・・・・・。」
効果抜群すぎる。
「「「キエエエエエアアアアアア」」」
うわ、奇声を上げながらこっちに走ってきた!なにこのケダモノ。きもい。
まぁ、何はともあれ抜剣。
抜きはなったその剣は薄い青の光を周りに放つ。大きさは一般的なロングソードと同じくらい。幅がすこしあり、そして剣全体に金などで装飾されていて、さながら聖剣を思わせる。
「でりゃあ!」
気合いと共に剣で空間を斬る。ゴウッ、という風の音。そして3度の斬撃音。たったの一振りで大地を削り、迫りくる脅威を打ち倒す。それが。
「ヴェルマンウェ。」
ちなみにヤクザたちは結構な傷を負っている。鎧なんてしてなかったし、ただ突っ込んできただけだから当然なのだが、ここで死なれてはあとあと面倒だ。
俺は結構前に作った果汁いりポーションをヤクザ三人に丁寧に飲ませていく。
「「「う、う~ん。」」」
・・・仲がよろしいこって。三人同時にう、う~ん、て言うとは。じゃなかった、賭けだ、賭け。
「おい、起きろ。起きたな?じゃぁさっき言った賭け、覚えてるか?」
「あ、ああ。俺らの負けだ・・・。」
「親っさんに殺される・・・こ、ころ・・・。」
「く、口に広がる甘い味、ま、まさか気絶している間にキキキキ、キスされた!?」
最後のバカを足でグリグリしながら今後のことを考える。恐らくだがこいつらはそこそこ大きな組みたいなのに入っているんだと思う。そして1000万という大金。これは、そう簡単に解決できる問題じゃないぞ。
「その足をどけてはもらえんかね?」
とても低い渋めの声がその場に響きわたる。誰だこのおっさん。と思っていたがその答えはすぐにわかった。
「お、親っさん!」
なるほど、たしかにイメージ通りの人が出てきたな。ただし、和服ではなくこの世界の民族衣装みたいなのを着ている。似合ってはいるが。
「うちのモンが迷惑をかけました。この通りです。」
そういって頭を下げる。バカ三人もいそいで並んで頭を下げている。
「ひとつ確認したいのだが。」
「はい。」
「この子、スピカの借金についてだが。1000万、ほんとうか?」
剣をちらつかせながら聞く。これは嘘防止のためだ。俺は簡単に言ってしまえば部外者、という立場にある。そしてこいつらの事情すら知らない。もしここで、じつは2000万です、なんて言われたら嘘なのかほんとなのか俺には見分けが付かなくなる。
「な、なに?1000万だと!?」
ん、なんだこの反応?
「借金は100万のはずです!」
「と、いうことは・・・。おい!」
俺の声に、ビクゥ、となる三人。借金は100万だが、わざとつり上げ900万を三人で山分け、とかそんなんだろう。
「ご、ごめんなさい!」
「お、お袋が、病気で!」
「ライムちゃんに貢げない・・・?そ、そんな・・・!」
それぞれ(二人だけ)がよく聞く台詞を吐いてくる。どう考えても嘘だな(二人だけ)。
「お、おまえら・・・。破門だ。」
「「え?」」
「破門だ、といったんだ。」
「お、親っさん!」
「それだけはかんべんしてください!」
親っさんはそれだけ言うとこちらに向き直る。
「本当にもうしわけない。」
「許すのには二つ条件がある。」
借金を50万にする、期限は無くその金額は増えない。そう提案した。
「しかし、それでは他のモンにしめしがつきません。」
「んじゃ、残り50万の代わりにこれをあんたにやる。」
渡したのはドス。刃渡りは30ないくらいの普通サイズ。だがそのドスには使用者の心に反応して切れ味が増す、という能力がつけてある。怒りに反応すると恐ろしいくらいの殺傷力を発揮し、勇気に反応すると必中の能力がでる。正直くっついてのインファイトならどんなやつにも勝てる。
「これは?」
俺はドスの説明をする。とくに勇気の所は強調しながら。
「それをあんたにやる代わりに俺がさっき言った条件を飲んでくれ。」
「・・・わかりました。これほどのマジックアイテムをもらってはその条件を飲むしかありません。」
「50万はしっかり返済してやるよ。」
そうして彼らは帰っていった。ふう、よくある筋を通すだとか仇討ちとかへんな方向にいかなくてよかった。
「あ、あの・・・ありがとう、ございました。」
「いや、そんなに気にするな。それよりまだ50万借金残ってるんだぞ?」
「・・・はい、これから、が、がんばって、返したいと、思います。」
「・・・返せる見込みは?」
「・・・・・・・・・。」
黙りこくってしまった。仕方ないだろう、店は汚いし売り物もてんでだめ。そして店主兼店員が髪の毛ながい貞子状態じゃあな・・・。
「よし、俺、ここで働いても良いか?」
「え?」
「だから、働いても良いか?って訊いたんだ。」
「う、うん!良い!お、お願いします!」
良し、了承も得たし、何をしようかな?と店に戻ると、ぐしゃぐしゃに荒らされたままだった。
「まずは、掃除からだな。」
「・・・そう、ですね。」
あいつらを帰す前にここの掃除やらせとけばよかった・・・。
補足です。
ポーション・・・飲むと新陳代謝が高くなり自然治癒力を高める効果がある。
お金・・・単位はC、剣を買うのに5000Cくらい。
さてさて、この小説を書くに当たって絶対こういう展開にしたい!と思っていたところにたどり着けました。やっといろんな物を作って行ける描写を書ける、と思うと、キーボードのエンターキーと『」』キーをたくさん打ち間違えるほど楽しみです。
稚拙な文章でございますが、応援のほどよろしくお願いします。