<期待するとろくな事がない件>
ちょっと短め
精霊
火精、水精、風精、土精と称される四大精霊を祖とした自然現象を具現化した存在。
霊視など特殊な才能を持った者や専用の魔具を使うことでのみ、その存在を確かめることが出来る不可視の“物体”。それが精霊だ。
精霊は魔力の塊であるとも、霊力の塊であるとも言われており。その正体については未だ議論中―――と、言うか、幼女様も詳しくは知らないらしい。
幼女様曰く。精霊とは“世界の法則を運行、運用する存在”だそうで、大半の精霊は自我を持たないが、上位種や、人に使役された存在は自我を持つこともあると言う。
詳細は不明だが、精霊が力の塊であることは間違いなく。精霊がその力を振るえば、あらゆる自然現象が唐突に巻き起こり、精霊の位によっては大災害クラスの被害をもたらす事もあるという。
そして、その精霊を操る力を持つ者を、一般的に精霊使いと呼ぶ。
「つまり、何も無い空間に話しかけるのは、
危ない人じゃなければ、精霊使いくらいなもの、ってことか……」
「なの?」
「いやいや、そこで疑問符つけられてもな……」
幼女様と小声で相談した結果。分かったことは少ない。
精霊使い―――精霊術師がどういう能力を持ち、精霊を使ってどんなことが出来るかは把握できたが……。
それが世間的にどう扱われているか?
精霊に対する一般的な認識はどうなってるのか?
肝心な事は分からなかった―――が、逆に、知りたく無かった事が分かった。
俺に、精霊使いとしての素質は無い。
ついでに、魔法使いとしての才能も無いと言う現実だ。
―――あははははははははっ……過度の期待はしてなかったが、皆無とは思わなんだよ!
せっかく魔法がある世界に来たのに、俺が使えないなんて何の罰ゲームかと問い詰めたい。小一時間と言わず何時間でも問い詰めたい! 聞いた相手が幼女様じゃなければ、笑う前に怒鳴ってただろう、マジで!! はぁ……。
「な、何がおかしいんだい!?」
「……ん? ああ、わるいな。ちょいと予想外なことがあってね。
あーそうだな。何はともあれ―――少しお兄さんと、お話をしようじゃないか?」
うっかり笑ってしまったが、下手に醜態を晒して侮られたら拙い。冷静に冷静に、動揺や葛藤を悟られないように振る舞い、必要な情報を集めないとな……。
「あんたと話すことなんてない!」
少女の口調は固く敵意剥き出しだが、余裕のハッタリが効いてるのか魔法を撃ってくる気配は無い。
そりゃまあ、ここまであからさまな不審者と相対すれば、警戒が先立つだろうな。
魔法を撃たれて無様な姿を晒す前に、脅しをかける必要がありそうだ。
―――とは言え、どうやってビビらせるものか?
半端な脅しじゃ逆ギレされる可能性が高い。それなりに度肝を抜く必要がある。
精霊使いがどのくらい恐れられてるか不明だが、さっきの口ぶりからするとそれなりに警戒される存在じゃあるらしい。
だが、その精霊使いはすでに殺害されてるわけだから、それだけじゃ足りないかもしれない。
『精霊使いが、なんで二人もこんなところに……』
さっきの少女が呟いた言葉は、前の勇者が精霊使いであることを指している。
妖精種は先天的に精霊使いの素養があると言う話なので、半妖精である前勇者が精霊使いなのは当然といえば、当然のことだろう。
だが、その後を継いだ俺は、精霊使いの素養は0だ。
そう考えると、妖精神である幼女様の加護? を貰い、勇者を名乗らざるえない立場にいながら、その才能が無い俺は、色々と拙いのではなかろうか?
「ルゥ。俺の代わりに精霊に命じて、精霊使いの真似事をすることはできるか?」
「それはむり、なの……」
精霊への命令もやはり、世界への干渉と見做されるらしい。
当然ながら、代わりに魔法を使って貰うのも無理。
―――幼女様使えねーな。俺はもっと使えねーけどな! 使えるようになりてーよ……。
「まあまあ、そう言わずにな、いくつか質問に答えてくれないかな?」
言葉を適当に繋ぎつつ考える。
聞くべきことは概ね二つ。この場で死んだ山賊で全員とは限らないので、残党の有無。
そして、アジト。つまり山賊が拠点としてる寝床の場所だ。
ハッキリ言おう。このまま普通に野宿したら、俺は凍死すると断言できる!
季節がどうなってるか知らないが、日が傾いた現時点で、すでに肌寒いのだ。このまま道端で寝るハメになるのは、断固避けたい。
それに、うかつに寝て、山賊の残党や野犬とかに、寝込みを襲われるのもごめんだ。
なんとか安全な寝床を確保するためにも、ここで色々と聴きだしておく必要がある。
そう、必要があるのだが……。
「仲間は他にいるのか?」
「……」
少女は答えない。
答えないまま、チラチラと、俺のそばに転がる父親の遺体を気にしてるのが分かる。
逃げるか戦うかで悩んでるようだ。
本音では逃げたいようだが、遺体を残して逃げるのに躊躇してると言ったところだろうか?
ならそれを上手く使えば……。
「正直に質問に答えるなら、こいつを連れていくのを許可してもいいぜ?」
「!? 父から離れろ! この“ピー”野郎!!」
少女から怒声を返される。
ヤバイ裏目った!? 組んだ手に、光っぽいのを集め始めやがった!
落ち着け落ち着け、えーと、あー、そ、そうだ! これなら!!
「……最終通告だ。
質問に答え、こいつを連れて帰るか……(ルゥ! 頼む!)」
「?!」
「はい、なの!」
幼女様が手を振ると、ドサドサドサッっと山賊の死体が周囲に散らばる。
意図せず回収していた死体を、全て出してもらったのだ。
「―――“こいつら”の仲間入りするか! 好きな方を選べ!!」
「ひぃ!?」
俺の周囲に撒かれた死体の山。俺の威嚇と突然降って湧いたような惨劇の光景に驚いたのか、少女は息を飲み、ぺたりとその場に座り込んだ。
組んでいた手からも光が消える。少女の目から戦意が消え、目元と足元から体液が溢れ、零れ落ちる。
―――やばっ! おどしすぎたか!?
山賊の少女はレギュラー化する予定ですが、ヒロインになるかは未定です。
ハーレム予定はありませんし、それどころかメインヒロインの存在自体が未定です。
ただし、敵味方問わず女性比率は高めですので、何をとは言いませんが、ご安心下さい。
幼女様? メインマスコットですが何か?