<同情するとろくな事が無い件>
ツッコミ推奨。
何回読みなおしても、自分じゃ脳内で保管されて、誤字脱などに気づかないことが多いのでw
俺が住んでた世界とはまるで違う異世界のお話だ。
大きな帝国が世界を支配していた。いくつもの問題を抱えていたが、概ね平和だった。
だが、その平和は破られた。
突如魔王が現れた。魔王の率いる魔族の軍団によって帝国は崩壊した。
神々は焦った。
人や獣同士が争うのなら、悲劇ではあるが問題はなかった。
輪廻転生。死しても時はめぐり魂もめぐる。世界を司る神々は、悲劇は人々が乗り越えるべき試練の一つだと考えてたからだ。
しかし、魔族の存在は問題だった。
魔族の特性。魂を喰らい己が力と成す能力。それは輪廻転生の否定であったからだ。
このままでは魂が枯渇する。管理すべき生物が居なくなる。
焦った神々は魔族を倒すべく神器や叡智を人々にもたらした。
人々は神々の協力を生かし、魔族に立ち向かい勝利した。
だが、魔族は滅びなかった。
輪廻の輪の外にいる魔族にとって、肉体の破壊は死を意味しなかったからだ。
そこで神々は考えた。
殺し切れないなら、封印すれば良い―――と。
封印は順調に進んだが、封印しては残党がそれを解き。
再封印しても、やはり残党がそれを解くといったイタチごっこが続いた。
さらに神々は考えた。
個別に封印するから解かれるのだと。
だったらまとめて封印……異界を作り、そこに纏めて追放してしまえば良い―――と。
魔族を封じ込めた異界。それは魔界と呼ばれるようになった。
そして、世界は平常に戻った。
戦火の爪あとを各地に残しながら……。
それから1000年近い時が経たった。
その間、たまに各地に残された封印が解かれて暴れでる魔族も居たが、勇敢な人々の手で狩られ。被害を出しながらも滞りなく魔界送りされ“神々”にとって、平和な日々が続いた。
―――魔王の息子が生まれるまでは……。
**************
「えーと、うん。とりあえず状況を確認するぞ?」
「はい! なの」
ここは日本でも、地球でもない。次元の向こう側。異世界である。
魔界の門が開かれると、魔族が溢れ、この異世界は地獄になる。
魔王に復活されると、その魔界の門が開いた状態で固定される。
現在進行形で、魔王を復活させようと魔王の息子一派が活動している。
魔族が溢れると大変なので、魔王復活を食い止めるために神々が動き出した。
だがしかし、1000年の平和にボケた神々は、魔王の息子の誕生を見過ごしたことについて。
お互いに責任の擦り付け合いを始め、それがエスカレートして神々の黄昏を始めてしまった。
結果的に神々に見放され、放置された世界で、魔族の皇子は着々と力をつけていき。
ついには代表的な三国の内の一国。魔導帝国とその帝国がある大陸を制覇。
皇子率いる魔軍は、残った二国も制覇しようと海峡を超えてもう一つの大陸に進軍中。
地続きの二国は、非常時故に一応の協力は見せてるが、矢面に立ってる国とそうでない国との温度差は大きく、協調体制は遅々として進んでいない。
神々に託された神器や叡智は、長い時の狭間に失われたものの、三すくみの冷戦と交流によって鍛えあげられた各国の技術のお陰で、なんとか魔族に対抗はできている。
だが、状況は絶望的だ。この状況を打破するには、混乱する人々や国をまとめ上げる“英雄”の存在が必要不可欠となる。
「そこで嬢ちゃん……
―――いや、妖精神“ルー・ルー・ルー”様は、英雄となるべき勇者を選んだ」
「そうなの……でも……」
若き神であり、力もさほど強くない神である彼女は、戦力にならないと言った理由で、神々の争いに巻き込まれなかった。
そのため、ただ一柱。現在唯一、世界に干渉できる神として動くことを強いられた。
彼女は頑張った。
神の声を聞けるのは、信者のみである。
妖精の神である彼女の声を聞けるのは、妖精族だけであったが、肝心の妖精達に信仰心の高い者は少なかった。
自由気ままを愛する妖精は、信仰に囚われることを嫌ったからだ。
彼女は頑張った。
そして、半妖精の心優しき青年―――勇者を見つけた。
彼は頑張った。
勇者として選ばれたことを誇りとして、殺伐とした世界を平和にするために全力を尽くそうとした。
彼には才能があった。
剣の才があり、精霊とも交流を持ち、妖精神に見出される前から魔物と戦っていた。
才気に溢れ、誰よりも真っ直ぐな心を持った好青年であり、神々の黄昏から逸れた戦乙女を友に持ち。勇者として、世界に羽ばたこうとしていた。
彼は優しすぎた。
山賊に襲われた女を助けようとした。
山賊に人質を取られ窮地に陥った。だが、彼には実力があった。
一瞬の隙を突いて、山賊の一人を斬り殺し。人質となった女を助け出し背にかばう。
そのまま、残った山賊を討伐しようとした。
―――その刹那。凶刃に見舞われた。
人質の女は山賊の仲間だった。
背後からナイフで刺され、傷を負った。だが、余力はあった。
傷は浅く、女を振り払い反撃に転じれば良かった。勝機は十分にあった。
―――だが、彼女が涙を流しながら放った一言で動きが止まった。
「よくも、父を!」
彼は優しすぎた。
たった今殺した相手が、彼女の父であると悟った時、動きが止まってしまった。
騙そうとした親子。自分を殺そうとした親子。罪人であり悪党である山賊の親子。
同情の余地はない。だが、親子の情に触れてしまった。
山賊を“敵”ではなく“人”だと認識してしまった。その僅かな動揺が運命を変えた。
―――彼は優しすぎた。世界は、彼に優しくなかった。そして世界は、勇者を失った。
「なんというか……言葉に困るな」
「ひっく……うぇ…」
「あーまてまて、泣くなって」
俯いて涙ぐむ彼女の頭をポンポンと軽く叩き慰める
「あーと、一応聞くが勇者の蘇生は?」
「ムリなの……」
そりゃまぁそうだろうな。出来るならとっくにやってるわな。
あー俺も少しテンパってるな。余計なこと聞いちまった。
「勇者の代わりはいないのか?」
「いっぱいいっぱいさがして、やっとみつけた、なの」
求められる英雄像は、三国の希望となる人物だ。
魔導帝国。剣王国。聖王国。いずれも人間が主体となった国家らしいから、求められる英雄像もまた人間が妥当だろう。
なのになんで妖精の神様が勇者探しをやってんの?
妖精でない人間に、妖精神様の声は聞こえないんでしょ?
他の神様は何やってんの? 喧嘩? 内紛? 大事な仕事(世界の管理)を放り出して?
―――オーケー。理解した。神々はバカだ。
国々は何やってんの? 偉い人は何やってんの?
偏見、利権、確執、伝統、しがらみと疑心暗鬼でバラバラ?
―――おけおけ、把握した。人々もバカだ。
半妖精の勇者様? なんで死んだ? 仲間は? いない?
なんで戦乙女だけ? 差別?
ああ、半分でも血が入ってる分、英雄として認められやすいってことね。
逆に言うと、半分は人外なんで認められるのは大変そう……いや、大変だったんだな、うん。
そんなつらい目にあってなお、人を、世界を救おうとした稀有なお人好し。
―――おけ。納得した。勇者はバカだ。愛すべきバカだ。
おけおけ、おちつけ、俺! 熱くなるな。びーくーる、だ、俺。
母殺し。半妖精など異種族とのハーフはそう呼ばれる。
生誕の際に、母体が出産に耐えられず死亡することが多いからだとさ。
そういう事情から、本人は運命を。神を恨み。
犠牲となる人間からは忌み嫌われ。妖精などの純血種からも未熟な混血として蔑まれる。
だが、異種族の血を引く分、人間としては特異な力を有してることも多いため
実力で成り上がり、世間に認められてる者も少なくない。
―――だからこそ疎まれる。
「これからどうするんだ?」
「……あたらしいゆうしゃをさがす、なの」
「当てはあるのか?」
「……がんばってさがすの」
「探す必要はない」
「?」
「俺が勇者を引き継ぐ」
主人公は社会不適合者。
悪人じゃありませんが、善人でもない、独自の価値観を持つ変人。
コミュ障ではないので友人知人もいるけど、分かち合える親友も恋人もいない。
良い意味でも悪い意味でも大人になりきれない、世の理不尽を許容できないタイプの人間です。
バカバカ言ってる自分もバカであると自己認識してるのに改善しようとしない、そういうバカ。
だから、社会不適合者。それが主人公です。