真実
だが颯姫とスゥは振り返りもしないで見つめあっている。
それがまた酷く気に触るのか人間達は憎悪に歪んだ表情で睨みつけていた。
「ここは私達にお任せ下さい。
スゥ様はルゥ様を」
柔らかい笑みで送り出そうとするが
鋭い風の刃が颯姫達を襲ってきた。
だがなんなく颯姫に弾かれる。
それを見た三人がいきり立つ。
「愚か者め」
「今こそ、滅ぼしてやろう」
「楽に死ねるとは思わないことです。」
そう吐き捨て、三人が地上に突っ込んで行った。
「ここは任せて帰ろうか?」
優しく尋ねてくるスゥに頬が薄紅色に色付く。
「はい」
本当に嬉しげに頷き、スゥに更に近付こうとして左目を押さえる。
マルスの暴行で見えなくなった左目
布で隠していたがすでになんの必要性はない。
「邪魔ね」
「一体なにがあったんだい?」
ゆっくりとほどきながら颯姫は首を傾げ笑う。
「少し前に失明させられたのよ」
軽く言ったつもりだったが一瞬に空気が禍々しく変わる。
「誰だ?
ルゥを傷付けたのは
私の大事なルゥに血を流させたのは」
スゥの瞳がルビーのような赤に染まる。
遠くからは瘴気を纏う魔物達が雄叫びを上げている。
そしてついに左目を覆っていた布が外された瞬間、場が揺れた。
「許さない」
たった一言だった。
その一言と同時に地面に血の海が作り出され、阿鼻叫喚の叫びが轟いた。
誰も防ぐ事が出来なかった。
殺気と言う名の刃が人間達に襲い掛かり
ある者は何も分からずに地面に圧縮され
ある者は衝撃と共に身体をばらばらになり
ある者は身体の一部を落とされた。
あちらこちらで悲鳴と苦痛と絶望が響き渡る。
だが、その事態を起こしたであろうスゥには颯姫しか目に入っていない。
閉じられた瞼に唇を寄せ、小さく何かを呟く。
そして鋭い眼差しで地面を見下ろした。
「還してやろう
私のルゥがうけた傷を」
厳かに告げると軽く手を振った。
すると幾十人もの人間が痛みに泣きわめく。
それを冷笑で見つめ、スゥは左目を押さえるマルスを見た。
「お前のようだな。
ルゥの左目の光を奪った犯人は
どうだ?その身で味わった感触は?
悲しいか?悔しいか?憎いか?」
ぎらついた右目の輝きにスゥは足りないとばかりに、指をさす。
「ルゥがうけた痛みをすべてかえしてやろう。」
次の瞬間、絶叫が響く。
今度はリーフだった。
すでに足首まで凍りつき、必死に炎を作り出し溶かそうとしている。
だが、溶けることはない。
なぜならばその氷は先ほど颯姫を凍らせた魔術の氷
そうスゥは言葉通りに還したのだ。
颯姫を傷付けたすべてのものを仕掛けた者へと